hayanomidori

ウォルト・ディズニーの約束のhayanomidoriのレビュー・感想・評価

3.8
怒ってばっかりの病的な老婆として登場する「メリー・ポピンズの作者」と、一歩も引かない時に見せる吊り目の顔のウォルト・ディズニー。実際はもっと険悪だったものを脚色してどうにか感動的なストーリーに仕上げて作品として完成させたんだろうなー、と邪推しながら鑑賞しました。

特にウォルト・ディズニーがわざわざロンドンまで作者を訪ねて行ったくだりは完全に後から作った話で、そこで映画化権を口説き落としたわけではなく、お金に困っていた作者が渋々権利を売っただけで映画化には死ぬまで後悔していたのが真実のようです。

とは言え、野暮な話をまるっと削除し、両者を讃えつつ感動秘話に仕上げる辺り、流石だなと思いました。観る側だって別に真実の裏側のそのまた裏側まで興味ある人はそう居ないでしょう。適度に真実が織り交ぜられたファンタジーしか需要が無いことを映画製作者は良く知っています。

映画の原題は『Saving Mr.Banks』。直訳すると、「バンクスさんを救おう」かな。

W主演の2人が老齢期になって各自の父親に抱く呪縛にも似た感情を昇華させるために「メリー・ポピンズ」の映画化を実現した。というコンセプトで描かれたストーリーになっているようです。

私の観る環境では何をどう設定したせいか英語表記しか出て来ないので、この映画が探していた『ウォルト・ディズニーの約束』という邦題だったことは今さっき初めてFilmarksの検索で知りました。

「バンクスさんを救う」話だと思って鑑賞してから邦題に気付いたせいか、どうも作品のストーリーからしてウォルト・ディズニーは大して約束を守ってないし、2人の父親像の呪縛から2人「が」救われるドラマとして原題どおりの直訳で良かったのではないかと思ってしまいます。

まぁ、、、「バンクス」じゃ人が集まらないだろうから目を惹く邦題として有名人「ウォルト・ディズニー」の名を冠したのでしょうが。

聞くところによると、ウォルト・ディズニーの伝記映画で製作の裏側を描いた作品はこれが初めてだそうです。こう言った製作秘話的な話は面白いですね。多少脚色してあっても良いので、もっと観てみたいなと思いました。
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