あなぐらむ

人妻集団暴行致死事件のあなぐらむのレビュー・感想・評価

人妻集団暴行致死事件(1978年製作の映画)
3.5
これはもはやロマンポルノではない。約束事が守られていない。
描かれるのはまたしても「周縁者」の世界。河原に住んでいる事からも知れる貧しき夫婦と、変わり行く「郊外」から弾き出された若者達の「ついてない」出会いが起こす不幸。室田日出男の重量感が凄まじい。

古尾谷雅人達の猛り狂う若者像、その甘えと罪悪感の無さは現代にぶつけても全く違和感が無い。日夏たよりら、軽快に時代を生きる女性たちの姿が、現代へとこの物語を接続させる。
不具なる者に神性を見いだす視線にインテリの限界を見もするが、「そうじゃない方」から見ているのではなく、積極的にそこに分け入りながら、その事には触れようとしない粘りの姿勢に田中の真摯さを見る。
とは言え、その「ぬめりの無さ」はやはりロマンポルノの枠外に置くべき仕上りではある。
室やんの奥さん役・黒沢のり子は渾身の熱演、室田に屍体を洗われるシーンは鳥肌が立つ。田中の優雅なる屍体遊びのひとつの極点であろうか。

鑑賞時、上映中にプリント破損の珍しいトラブルがあったが、すぐに復旧して頂けた。流石シネマヴェーラ。お疲れ様でした。デジタルでは無い事故ですな。