津軽系こけし

フルートベール駅での津軽系こけしのレビュー・感想・評価

フルートベール駅で(2013年製作の映画)
4.5
理不尽が感情を揺さぶる。


フルートベール駅で実際に起きた警官による黒人男性発砲事件を題材にした本作。
その冒頭はいきなり当時撮影された映像が鮮明に映し出され、観ている人に強烈な印象を与える。

その導入を経て彼のフルートベール駅に行くまでの経緯がその後に映し出されるのだが、これから何が起こるか分かっているだけに彼の幸せそうな表情や彼が家族と楽しそうに話している姿がものすごく悲壮的に見えてくる。

こんなことが現実に起きただなんてとても信じられないし、信じたくない。しかし昨今、この話と通ずる出来事がアメリカで起きたことは記憶に新しい、彼も確か父親だったかな……。
この話題を掘り進めるとと感想文が論文になりかねないので割愛。

映画としての話をすると、こういった被害者モノの作品は(特に事実に基づくものは)被害者を美化しがちなことが多い、なぜなら被害者は何の罪もない劇上のヒロインであればあるほど人々は同情をしやすいからだ。私はこの考え方はあまり好きではない

しかしこの映画は決してオスカーを完璧な人間だとか謳ったり、同情を買うために美化したりする姿勢は全くなく好感が持てる。それどころかオスカーの負の部分を見せてしまっているまである、しかしそういった演出のおかげでオスカーに人間味が生まれ、彼に強い思い入れを持てるのだと思う。
多分オスカーの人間的欠陥を描かなければこの映画はここまで評価されなかったと私は思う(もちろんこの事実に対しての強い印象は抱くだろうが)。

忘れてはならないアメリカの負の歴史。批判もあっただろうにそれをここまで美しく悲壮的に描いたライアンクーグラーの仕事ぶりには本当に脱帽させられる。
硬い言い回しで書くことに疲れたのでこの辺で本音を一発……

警官ふざけんなコラ
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