烏丸メヰ

ベイマックスの烏丸メヰのネタバレレビュー・内容・結末

ベイマックス(2014年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

お気に入り作品記録。
ディズニー100周年に寄せて。

両親を亡くし、おばと兄と生きてきた少年ヒロ。
ロボットを戦わせる遊びに夢中で機械いじりが大好きな彼の憧れであり、理解者であった兄が、突如帰らぬ人となる。
兄が残したものは、人間の心に寄り添うふわふわの“ケアロボット”だった。

“おとぎ話感”よりも“メッセージ性とポリコレ重視”を強く物語るようになった近年のディズニー作品の中で、最も愛おしく素直な気持ちで楽しむ事ができた作品は個人的に二つ。
本作と『ラーヤと龍の王国』のみ。


日系人と思しき兄弟を主人公に、日本的な特色を取り入れた町並みのデザインや、そこで暮らす人々の生活の中に描かれる小物まで、トラディショナルかつポップカルチャーの色もかなり楽しく取り込まれていて見ているだけでワクワクする。

そんな、賑やかにごちゃついた舞台と、ロボットテクノロジーを主題にした物語の中で、ロボット「ベイマックス」は全く機械的でない(柔らかく、丸く、太っている)デザインなのが可愛らしくも面白く、序盤で亡くなってしまう主人公の兄の人柄を全編通して示してくれる。

途中から“感動ハートフルもの”から“バトルヒーローもの”へと物語の毛色が変わるが、映画公開当時日本ではこれが意図的に隠されていた節があり驚いた。
しかし勧善懲悪とバトルの中でもしっかりと“感動ハートフルもの”に帰結するディズニーらしい優しさを感じる事ができた。

個性的でマニアックな、いわゆる“オタク”の集まりである子供達の個性と、思い思いのヒーロースタイルも魅力的。
中でも、着ぐるみ好きのバケモノみたいなデザインを貫く彼(実は金持ちのお坊ちゃんだった驚き)に抜群の愛着がある(笑)。

私が最も素晴らしかったと思えるのは、ベイマックスに残されていた兄の映像のシーンだ。
かつてベイマックスを整備していた時のトライ&エラーの映像が再生される。
ここがたまらなく良い。
ただただ兄が技師としてベイマックスに向き合った日々、彼の熱意が、弟の前で再生される。
凄まじい美しさがある。
(邦画なら絶対“弟へのビデオレター”が出るだろうなって所だよね)

そんな兄の優しさの結晶であるベイマックスが、弟を守る為に遂行した行動。
そして、技師の思いと残したものは不滅であるという、ロボットだからこそ描ける優しくポジティブなエンディングが愛しい。
烏丸メヰ

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