寂々兵

ホームレス理事長 退学球児再生計画の寂々兵のレビュー・感想・評価

4.4
昔NPO法人の事務局で働いていたので、そういう視点から興味深く観た。自分はある程度軌道に乗った船に後から乗り込んだので、さすがにホームレス理事長改め無計画理事長ほど資金繰りには苦労しなかった。しかし肝心のサラリーは月26日の勤務で「コンビニ夜勤の方がマシ」というレベル、基本給以上のお駄賃が欲しかったら市の助成金事業を身内で奪い合って助成金から絞り出せ、という随分バトルロワイアリズム溢れる環境だった。それはさて置き、NPOって団体は敷居が高いようで作るのは案外簡単で、10人の人員を集めて活動分野を明確にすれば、期間は3か月以上かかるが大体認証される(現在日本には5万件のNPO法人が存在する)。けれどもその大半は資金繰りに失敗して何をやってる団体だかよく分からんことになる。NPOが胡散臭い団体扱いされる所以はここにある。「NPO法人〇〇の会」などと看板が掲げられた施設があるものの閑散としていて、ご近所さんも「何をやってるか分かんなくて胡散臭いわね~」と噂話をするが、マジで何もやってなかったりする。金がないから。そしてそういうとこは理念も事業計画もない。だからろくな事業計画を立てなかったくせに、こうしてテレビ局に取り上げられ、大口スポンサーも現れ、理事長も市議になったりしてノりまくっているルーキーズはかなりラッキーな部類に入る。ついでに所轄庁に認められて「認定NPO」に格上げされると税金面で結構お得なことになる。頑張れ山田、負けるな山田。というわけで全然関係ない話になってしまったが、理事長奮闘パート、野球少年奮闘パート共に『ヤクザと憲法』が霞むレベルでヒリつく地獄のような傑作だった。
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