このレビューはネタバレを含みます
原題"Solace"(慰め、情け)。
難病で余命いくばくもない人々を殺す(mercy killing)殺人者のチャールズ・アンブローズを、千里眼の持ち主ジョン・クランシーが追う。彼もまた、26歳の娘を白血病で2年前に亡くしていた。
アメリカのクライムドラマにウェールズ(アンソニー・ホプキンス)とアイルランド(コリン・ファレル)が乗り込んだという趣き。
アメリカ人を代表するのがFBIエージェントのジョー(ジェフリー・ディーン・モーガン)とカウルズ(アビー・コーニッシュ、オーストラリア人らしい)。
ジョーが退場するまでチャールズが出てこない。コリン・ファレルが映るのは実質的に終盤30分だけなのだが、圧倒的な存在感。
ホプキンスは『ハンニバル』のイメージに重なる。湖のボート、切断される脳、オペラ好き、パートナーを組む若く金髪の女性FBIエージェント。
ホプキンスとファレルの共演シーンはほかの出演者とは次元が違う感じだ。ジェラルド・マンリー・ホプキンスの"The Leaden Echo"をチャールズが物思わしげに暗唱していたら、ジョンが引き継ぐところなど、演劇を観ているようなドラマティックさだ。
ファレルもホプキンスも、ほかの人間とはまったく異なる力を持った超能力者に見える。特にチャールズがジョンの視線が幻視中に固まってるのを見て、"Ah, the process."(「ああ、(君が視るには俺よりも)時間がかかるのか」)と言うパブでのシーンなど。
作劇や展開は大味なアメリカのサスペンスドラマだが、格が違う俳優が加わるとこんなに作品のレベルが上がるのか、と思わされる。