平成2年の男

不倫純愛の平成2年の男のレビュー・感想・評価

不倫純愛(2010年製作の映画)
2.0
・不評である本作だが、何がダメだったのか因数分解していく。

・因数分解よろしく初めに切り込むのは、数学のエピソードがしつこく出てくる点。私には理解できない深遠な意図があるのかも知れないが、作風から完全に逆行している。文芸的なかほりを漂わせたかったのなら失敗している。差し込む必然性がない。

・美しいと感じるシーンは多いが、一つの物語として一貫したイメージとしてまとめきれていない。「僕の思う美しい場面」を継ぎ接ぎした結果、視聴者を置き去りにするような違和感のある情景転換になってしまった。

・不倫の純愛に至る納得性や妥当性を視聴者に提示するためには、二つの時間軸を意識しなければならない。作中に流れている時間と、視聴者に流れているリアルタイムの時間だ。本作の場合、出逢いからセックスに至るまでの過程に尺の半分を使っている。そのために肝となるセックス後のエピソードを描く尺が圧倒的に足りなくなっている。セックスから純愛に至る過程に説得力と迫力が出るよう作り込まなければいけないところ、本作はそれを怠った。なぜなら美麗なシーンを披瀝するのに始終したから。己の審美眼に陶酔した製作陣が作品の骨子を見失っている作品でもある。

・純愛不倫に溺れる男を描きたいなら簡単だ。妖艶な女を用意すればいい。

・ポジティブな評価点としては、2010年に作られた作品にしては、日本文化特有の静謐な美を強烈に予感させるシーンが多かった。特に湖畔のシーンは、セックスシーンなんぞよりはるかに官能的だった。

・2人きりで家に入るなり、舌を絡めつつ服を脱がせ合い、壁や床にぶつかりながらベッドにインする男女の図ってさ、映画にありがちだけど、リアルだと喧嘩になるんだよな。たぶんだよ。