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ピーター・パン2/ネバーランドの秘密のRenのレビュー・感想・評価

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こちらもVHSで食い入るように観ていた。2000年前後の所謂ディズニー暗黒時代に量産された続編群の中で出色の完成度だとずっと思っている。前作を観て今作を観ない意味はよく分からない。傑作。映画というより血肉の一部なのでスコアは無しで。

Walt Disney Picturesの懐かしすぎるロゴからシームレスに雪崩れ込むオープニングが最高。ピーターパン始まりまっせ!と観客を奮い立たせる。絶対にスタッフクレジットにできるのに敢えてせず映像だけ見せていくサービス精神よ。

舞台は戦時中のロンドンなので、前作以上に「夢を見ることを捨てなければならない」「子どもも大人らしくならざるを得ない」切迫感がある。前作のテーマを外堀からガチガチに固めていく強かさが素晴らしい。単純に脚本の出来で言えば前作より上なのでは?とすら思ってしまう。

前作で大人になりたくないが大人になることを選択したウェンディ。彼女の娘・ジェーンは今作で、夢(子どもらしさ)を切り捨ててきたがそれを決して切り捨てないことを選択する主人公になる。しかし夢を切り捨てないことは、(自分より幼い弟がいる・戦時下においては)子どもに戻るのではなく大人になることであるという帰着。見た目は前作の反転でありつつ中身は前作と同じベクトルを向いているの、かなり面白いし凄くないですか。

ティンカーベルの立ち位置もしっかりハマっている。序盤は前作同様嫉妬に燃える女子として魅せるが、後半はジェーンの変化・成長における最大の指針として名演を見せる。アイコンとしての存在感は間違いなくあったけど劇中の立ち位置としてどこかふわふわしていたティンクを2作目でこう使うのか。
「ピーター・パン」では殆どのキャラクターが実在の人間か動物のシルエットをしているけど、ティンクだけが妖精という明らかなファンタジーだ。周辺のキャラ達がティンクはいると信じているから彼女はそこに居る、というある種ドーナツの穴的な存在の彼女が、ジェーンが夢物語を信じるか否かのリトマス紙として立ち回るのは納得。

誰もが語りたくなるラストの再会シーン。「変わらない」とは見た目が子どものままなことだという常識に生きてきたピーターが、人の変わる/変わらないはそれだけではないのだと気づく一瞬の時間。夢は大人になっても拠り所となる尊いものなのだと観客が気づく一瞬の時間。ファンサービスとして感動の名シーンでありながら、ここが無いと2作続いた物語が締まらない大切な場面。

物語も見応えはあるけど、まずはシンプルに面白映画として観てほしい。海賊戦が錨で石畳を削りながらロンドンの街中を縫うように飛ぶアクションは、カメラワークもCGの使い方もしっかりかっこいい。
ジェーンが狂言回しとしてピーター陣営とフック陣営の間を二往復する展開も◎。このおかげで両者のカットバックのテンポが上がって飽きない。

個人的には、作られるべくして作られた感が最もあるディズニー続編の一作(『シンデレラ』も推したい)。また観よう。

その他、
○ 劇中歌『I'll Try』が名曲なのは言わずもがな、個人的にはエンディングの『Do You Believe in Magic?』も推したい。The Lovin' Spoonfulの楽曲を現代ポップスに明るくアレンジしたカバーだけど、これ以上ないほどぴったり。

その他、よく覚えているシーン
○ 防空壕での一連のシークエンス。
○ 鳥のカットから、突如上空に現れる海賊戦。ここで一気に映画が転調してかっこいい。
○ ネバーランドに入る際の万華鏡のような演出。
○ バナナ✔︎ ココナッツ✔︎
○ メモ帳リレー。
○ フック船長が羽根で誓約書を書くところ。
○ 金の笛。
○ ティンクの光が消えるシーン。
○ 立派な船長になんか な"り"た"く"な"ーい"‼︎
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