アメリカ開拓時代を無節操に賛美するような言説に熱い銃弾をぶっ放したかのような映画に思えた。
トミーリー扮する主人公のブリッグスは、精神を病んだ女性3人を故郷に運ぶ仕事をしぶしぶ受け入れた男を演じている。雇い主のヒラリー・スワンクは、財産と教養と信仰心と料理上手を兼ね備えた女性であるが、31歳になり誰にも結婚相手として見向きもされなくなる現状を憂いている。
西部開拓時代の暗黒面を描くため、随所に非情さを盛り込んでいる。
ジェームズスペイダー演じるホテルオーナーはその典型例だろう。
人情よりもカネがすべて。資本主義の権化のような悪党として描き、道中の出来事で人間性を取り戻したブリッグスはホテルごと焼き討ちにしていた。この仕打ち自体が非情な行為でもあるが。。
最期にせっかくあつらえたメアリーの墓標が川に流れ落ちていくシーンは無常だった。
しかし、このシーンをあえてオチにもってきたのは深い意味を込めているのだろう。そのシーンのちょっと前にブリッグスが16歳の少女に求婚し、「メアリーを知っているか?君が生きていく限りメアリーは生き続ける」的なニュアンスの発言をしていた。
亡き人の生き様や業績や人間性は、荒野に建てられて朽ちていく墓標に刻み込むのではなく、その時代に生きている人々(特に子どもたち)に伝え、語り継がれることが大事なのだ、と言いたいのかな。
だから、ブリッグスは歌を歌うことを批判されたらいきなり拳銃を撃ちまくっていたのに、メアリーの墓標を川に蹴落とした輩を打ち殺したりしなかった。味わい深いストーリーだ。
メリル・ストリーヴは神々しい存在感を放っていた。
物語のしめくくりに抜群のキャスティングだ。