アキヒロ

アメリカン・スナイパーのアキヒロのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.9
とても面白かった。
この映画を見ていると、強くなることは、ある意味悲しいことなのかもしれないと思わされる。
戦地に何度も赴き「伝説」と称えられた男は、自国に戻ったとき"普通の父親に戻ることは困難”になっていた。
ブラッドリー・クーパーの無垢な瞳がどんどん曇っていくのがつらい。

無垢な少年が爆発物を持って突撃するのではないか。
夕食に招待してくれた男は武装勢力の幹部ではないか。
周囲のあらゆるものを疑い、そういった危機管理能力を高めていくことで、生き残る確率を高める反面、平穏な日常に戻ることを困難にしていく。
その背反律がどうしようもなく悲しかった。

クリスは国に帰れば一人の父親。
しかし、ナットを締める工具の音を聞くと、銃撃ではないかと神経を尖らせてしまう。
静かに座っていても血圧は170/110もある。
生まれたての娘の泣き声は、戦地で自分が殺した男の娘の悲鳴を思い起こさせる。
アメリカではそんな命をかけて国のために戦った男たちが、自国に戻ったときに就職や社会復帰ができず社会問題になっているらしい。
戦地の「英雄」は、自国ではただの「社会のお荷物」なのかもしれない。

そんなクリスの最後は驚くほどあっけない。
「最強の男」も、ちゃちな男の凶弾で死ぬ。
人間の強さの中の、泣けるくらいのもろさを見た。
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