けーな

ロンドン・リバーのけーなのレビュー・感想・評価

ロンドン・リバー(2009年製作の映画)
3.8
派手さは無いが、秀逸な話だった。子供を心配する親の気持ちや、子供から聞かされていなかったことを知って驚く様子などが、とても巧みに表現されていたと思う。

2005年、イギリスのロンドンで起きた同時爆破テロ事件を扱ったストーリーなので、とても辛い内容ではあった。

イギリスのガーンジー島に住み、農家を営む主人公は、フォークランド紛争で夫を亡くし、女手一つで娘を育て上げたが、テロ事件の直後から、ロンドンに住む娘からの連絡が途絶えてしまい、心配になって、ロンドンへやって来る。娘の下宿先に行くと、そこは、イスラム教の人達が居住する地域で、さらに、娘は、アラビア語を習い、モスクにも通っていたことを知り、カトリック教徒の主人公は、驚愕する。

一方、フランスに住むアフリカ系の男性は、別れた妻から、息子の消息が途絶えたと連絡をもらい、6歳の時から会っていない息子を探しにロンドンへやって来る。

テロ事件以降、消息の途絶えた子どもを探しにやって来た、宗教も人種も違うその2人が、意外な繋がりを見せて、話が進んで行く展開が、見事だった。

前半、主人公が、イスラム教や、アフリカ系の人に対して偏見を持っていることが分かるシーンがいくつか出てくるので、それを見ると、そのような差別や偏見は、良くないことだと、当然分かるのだけれども、しかし、彼女と同じ立場に置かれたら、同じように思って、同じような態度を取ってしまうかもしれないなと、強く思った。そう思わせるところが、この映画の上手くできているところだろう。

フランスへ旅行に行ったと知った時の安堵する気持ち、よく分かる。そして、さらにラストの気持ちも…。

物語が進むにつれて、分かってくる娘のことを徐々に受け入れていく姿は、子を想うからこその姿なのだと思って、それも、また悲しく辛かった。
けーな

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