一人旅

JOYの一人旅のレビュー・感想・評価

JOY(2015年製作の映画)
5.0
デヴィッド・O・ラッセル監督作。

俊英デヴィッド・O・ラッセルが、実在のアメリカ人女性発明家:ジョイ・マンガーノの半生を映画化した日本劇場未公開の伝記ドラマで、同監督の『世界にひとつのプレイブック』(2012)や『アメリカン・ハッスル』(2013)にも出演したジェニファー・ローレンスとブラッドリー・クーパーら実力派がキャスティングされています。製作総指揮には映画の題材となったジョイ・マンガーノ本人が名を連ねます。

家事での実体験からヒントを得て、手を汚さずにモップ掛けができるアイデア商品「ミラクル・モップ」の発明で成功を収めたNY出身の米国人女性発明家兼実業家:ジョイ・マンガーノ(1956-)の成功までの苦難の道のりを事実に基づき描き出した実録サクセスストーリーです。主婦の家事を手助けするアイデア新商品の発案・デザインから試作品の製造、そして日本でもお馴染みの大手通販チャンネル:QVCでの実演販売による全米規模での成功とその後の予期せぬ窮地からの再起…と発案・製造・資金繰り・マーケティングと総てのプロセスを実践したマンガーノの不屈の闘志と挑戦のゆくえを、自動車整備工場を本業とする個性的な家族との関わりと絆を軸に映し出していきます。

アメリカンドリームを実現した実在の女性発明家の波瀾曲折の生き様とその成果を爽快に描いた伝記映画の隠れた秀作で、商品の企画・製造プロセス以上に、資金繰り&権利の確保&マーケティングをいかに上手くやれるかが成功の鍵となっていたことが興味深いところです。良い商品であれば放っておいても売れるだろうという日本人的観測は、特にマーケティングを重要視し資金を投じるアメリカにおいては幻想に過ぎず、物を作った後にどう売るかという詰めの課題に対する戦略的アプローチが不可欠であることが浮かび上がってきます。

主演のジェニファー・ローレンスが七転び八起きの精神で突き進む不屈のヒロインを好演していますし、成功の鍵を握るQVCトップをブラッドリー・クーパーが演じます。また、ヒロインの変人気質な父親を妙演した名優ロバート・デ・ニーロのいぶし銀の存在も物語のアクセントになっています。
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