サマセット7

映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~のサマセット7のレビュー・感想・評価

3.9
イギリスのアードマンアニメーション製作、BBC放送のストップモーション・アニメーションTVシリーズの、2015年公開の劇場版作品。
監督は「マダガスカル」などの脚本で知られるマーク・バートンと、「ひつじのショーン」のTVシリーズで脚本を手がける、リチャード・スターザック。

[あらすじ]
牧場で平和に暮らすショーンらひつじたちだったが、毎日同じサイクルの生活に飽き飽きし、ついに「休日」を過ごすことを決意する。
ショーンたちは、工夫の末、何とか牧場主と牧羊犬ビッツァーを牧場から追い出すことに成功するが、その結果、牧場主は行方不明に!!
何やかんや彼がいないと困るショーンは、牧場主を探すため、大都会に冒険の旅に出るが…!!!

[情報]
「ひつじのショーン」とは、「ウォレスとグルミット」というストップモーションアニメのシリーズで登場した羊のショーンというキャラクターを主人公とする、スピンオフ作品である。
基本的には、テレビシリーズで、すでに第6シリーズまで製作されている人気シリーズである。
今作は、その初の映画化作品にあたる。

ストップモーションアニメとは、静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしてカメラで撮影して、それ自体が連続して動いているように見せる撮影技法を言う。
「ひつじのショーン」ではクレイアニメ(被写体を粘土を使って作成する)が採用されている。
ストップモーションアニメは、非常に手間暇がかかる撮影方法として知られている一方で、独自の表現が可能で、愛好者も多い。

「ひつじのショーン」は、羊の視点で物語が描かれるため、音声としての人語は使用されず、言葉は人が発するか、動物が発するかを問わず、意味不明な音声として表現される。
今作でも同様である。

今作は、2500万ドルで製作され、1億ドルを超える興収を得た。
特に批評家から、極めて高い評価を受けている。

[見どころ]
次に何が起こるのか?予測できないストーリー!
ギャグの威力が思いの外高い!!
笑ってしまうシーンが多数!!
羊たちと都市の保健所職員トランパーの追いかけっこが生む、シリアスな笑い!!
羊と人間の常識の違いが生む、ギャップの笑い!!
そうはならないだろ!という、超展開ギャグ!!
ストップモーションアニメで描く、温かみのある表現!
動物たちが、活き活きと描かれる!
ストップモーションアニメならではの、キメ絵の威力!!
落としどころは爽やか!ハッピーな気持ちになれる!!

[感想]
楽しんだ!!

当方、元のテレビシリーズも、ウォレスとグルミットも未見。
全く門外漢だが、たまたまテレビ放送を録画できる機会があり、評価が妙に高かったため、録画してみたものを、ようやく鑑賞した。

結果、特にシリーズの予習はなくとも、十二分に楽しむことができたと思う。

今作は、人語のセリフが一切なく、アクション(と文字)で全てを説明する。
しかもストップモーションアニメ!!
1時間40分の尺の作品を作るためには、凄まじい手間がかかっているはずだ!
こうした制約にも関わらず、あるいは、その制限を逆手に取ってか、今作の表現は、非常に雄弁だ。
理解に苦しむ場面はほとんどなかった。

そして、ギャグの楽しさと、ストーリーの先の読めなさに、ぐいぐい惹き込まれた。
羊たちをつけ狙う動物保護局の敏腕職員トランパーが結構怖く描かれていて、かなりハラハラさせられる。
何しろ、大都市を羊が旅をするわけで、非常に目立つ。
見つかれば、通報されて、直ちに捕まってしまう。
では、どうやって、行方不明の主を探し出すのか?
ひつじたちは、知恵と勇気で危難を乗り越える!
それでも一難去ってまた一難。
次々と襲いくるトラブル!!
エンタメ作品として、とてもよく出来ていた。

ラストは、期待通り、爽やかに締めてくれて、大満足!
高評価も頷ける!!

[テーマ考]
今作のテーマは、絆、であろうか。
ショーンと、仲間の羊たち。
牧場主。
牧場犬のピッツァー。
それぞれの絆が、旅を通して描かれている。
各々の絆が試される中盤以降の展開は、スリリングだし、感動的だ。

[まとめ]
エンタメとして非常に良くできている、ストップモーションアニメの佳作。

ストップモーションアニメには、高い評価を受けている作品が多い。
今作を製作したアードマンアニメーション以外にも、「コララインとボタンの魔女」などのライカスタジオ作品、「犬ヶ島」などのウェス・アンダーソン作品、日本の堀貴秀による「JUNK HEAD」など、枚挙のいとまがない。
評価の高いものだけでも、順次見ていきたいものだ。