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マルタのことづけのemilyのレビュー・感想・評価

マルタのことづけ(2013年製作の映画)
3.4
家族も友達も居ないクラウディアが、入院先の病院で四人の子持ち、シングルマザーのマルタに出会う。マルタは持ち前の優しさと明るさでクラウディアを自宅に招待し、子供たちとも徐々に打ち解け、分け隔てないマルタの愛を受け、それぞれ現実を受け止め家族を作っていく。

マルタの四人の子供達が見た目も個性豊かで、常に天真爛漫に明るく、それぞれのポジションをしっかり演じているのが、瑞々しくクラウディアの心の隙間に嫌味なくゆっくり溶け込んでいく過程が繊細に描かれている。"死"と言う大きなテーマがありながらも笑顔に溢れている。それはそのままマルタが子供達に注いできた愛情の大きさであろう。個性豊かな子供達とクラウディアの交流に大げさな演出はなくとも印象的なシーンも多く、気がついたら家族の一員になったような、必要とされてる空間が出来上がっているのだ。

冒頭はクラウディアの生活を描写し、表情や暮らしぶりから社会から疎外されて暮らしているのがしっかり読み取れる。生活音がしっかり挿入された描写の中で、騒音の中で浮き上がる孤独は痛みを纏う。気になっていた生活音も中盤になるとなにも聞こえない。それは彼女の孤独の器がしっかり満たされているからだ。

さりげない会話とふれあいから見せる、心の繋がり。それにより子供達も現実を受け入れ、マルタにも安心感を与える。クラウディアの居場所がしっかり確保され、仕事が与えられる。やらなきゃならない事を与えられることで、そこに居やすくなるのだ。

血の繋がりのない彼女を受け入れ、心を生かすのはマルタの愛と心の深さであろう。しっかり生きた証は子供達の笑顔に刻まれている。どれだけ愛されどれだけ必要とされてきたか。最後にマルタが残した願いにさらに大きな愛を感じる。美しく笑顔の幕引きである。清々しく暖かい。こんな幕引きができたら素敵だ。
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