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シネマ歌舞伎 らくだのmoviefrogのレビュー・感想・評価

シネマ歌舞伎 らくだ(2008年製作の映画)
4.2
落語「らくだ」をわりと忠実に歌舞伎化。

落語の「らくだ」が本当に好きで、春風亭一之輔の2016年の「らくだ」には涙が出るほど大笑いした。死体と一緒に踊りを踊り、酔っ払ってクダを巻く不謹慎この上ないバカ噺を、中村勘三郎と坂東三津五郎が大熱演。

50数分の短編で、サクッと軽く観られるのがいい。

コメディというのはうまい人がやらないと大惨事になるものだけれど、この二人であれば何の心配もない。脇の人たちもよい。ちょっとしたアクシデント的場面もあり、勘三郎丈が必死で笑いをこらえているのが可笑しかった。つくづくこの人の早逝が惜しい。

主客逆転のところにもう少し原作に近いブラックな凄みがあればさらに深みがまして最高だと思う。主演二人が楽し気に演じているので、それはそれでホッコリ楽しいのだが、落語家の高座では意図的に演出される毒々しさは薄まっている。ブラックコメディは毒があればあるほど笑いの質が高まる。落語はこの世界をたった一人の噺家が演じてしまうのだから凄いことだと改めて思う。
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