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シアター・ナイトメアのYSKのレビュー・感想・評価

シアター・ナイトメア(2013年製作の映画)
1.3
正直こんなに恐ろしい話は見たことありません
映画館のシネコン化、デジタル化の波に乗り遅れ、映写技師であることのみを拠り所にしたプライドにすがりデジタル化への移行と教習を拒否したことから閑職に追われた古臭い主人公が、客としてやってきたカップルを主人公に復讐譚と最高のホラー作品を撮ろうと画策する…というお話

カップルの彼女を人質にとり、男に銃を握らせ、憎き支配人を撃ち殺させ、レジの金を漁らせることで強盗を装わせ、それら全てを撮影した防犯カメラ映像を編集することで一本の作品とする…『ここにタイトルを入力』かよ!

このお話の何が恐ろしいか、兎にも角にも一言一句一挙手一投足、すべてが登場人物たちの善意で成り立っているのです
男と支配人が話し合わないこと前提、カップルの男と女が話し合わないこと前提、女が付き合っている男より初対面の自分を全幅に信頼すること前提、通報を受け飛んできた警察官が都合よく引き金を引く前提、シナリオメモを落としたことが伏線でも何でもなく、ただただ世の中の善意を前提としなければ成立のしないシナリオが凄まじく恐ろしく感じることは間違いありません

そして何より、その偏屈とした映画愛ゆえにデジタルへの移行を拒否し8mmフィルムを愛しているというキャラクターのはずなのに、拘束した彼女や自身を追いかける男を撮影する方法がデジタルって…なんでだよ!そこは8mmで撮るべきだろ!自分で描いた登場人物のアイデンティティすら把握できていないとは、なんて恐ろしいことか!

そういうわけで、この監督には映画愛などというものをこれっぽっちも持っていないことだけはわかりました
あ、でもロバート・イングランドの表情だけは素晴らしかったです
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