くろきる

みんなのアムステルダム国立美術館へのくろきるのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ドキュメンタリーはほとんど観たことなかったんですが、一時期美術館がテーマの映画作品が観たくてチェックしてたこの映画、ようやく観れました。

大きなものを作るときは、どんな業界でも似たようなことはおこるんだなぁとしみじみ思いました。

全体的な雰囲気は、ドキュメンタリーをマイルドにして面白いとこはしっかり見せて、ピリピリした雰囲気のところは控えめに……。と観やすかったです。
観ていてこちらがヒヤリとする場面はなく、次から次に湧いてくる問題を面白おかしく観れる映画だと思います。

この映画が刺さるのはデザイナーとかいわゆる中の人たちじゃないかと思ったり……なんとも胃がキリキリする場面が 笑

映画の中で登場する「改装する中での問題点」はどれも面白かったです。特に1番取り上げたであろう「サイクリストとの戦い」はもう一周回って笑うしかなかったです。メインエントランスに自転車が多く通る道が通っていて、そこを改装しようと地下へ降りる歩行者用スロープを道の真ん中へ、その両端に自転車用通路を設置というデザイン案を出すんですが、まぁサイクリストが頑として改装を良しとしない……戦いというかもうあそこまで行くと血の流れない戦争みたいでしたw 面白かったんですけど、どうしてあそこまで自転車の道幅を確保することに命をかけるのか……w

映画の視点は美術館寄りだったと思うので、あまりサイクリストというかクレームをつける市民がいいようには編集されてなかったのもあると思いますが。

結局サイクリストの意見を尊重して別のデザイン案が採用されるのですが、さらにそのあと館長が替わり、その新館長が「もっと別の案を考えよう」と言ってスロープ案が復活する流れは流石に笑いが止まりませんでした。もうやめて!建築家のライフはゼロよ!!

ほかにも色々「建築の申請書類のチェックが厳しすぎて作業できない件」「内装の壁を塗った後に変えたいとふんわり館長に言われた件」「予定より展示数減らさなきゃいけない件」「そんなことより金剛力士像美しいでしょう?の件」と問題が湧き出てましたが実際に観たほう楽しいと思います。

問題ばかりあるように見えますが、ほかにも学芸員さんの作品へのこだわりや展示をしたい作品を落札する時の様子など普段では見れないところまで撮影してあり、そういう「裏話」的な話が好きなかたにはぜひおススメです。

映画ラストの完成した美術館の中、改装最中にもかかわらず美術館の完成図を想像しながら学芸員さんが展示の位置を吟味し、内装担当のデザイナーが作品が映えるよう選んだ暗い壁をバックに、薄明かりのなか照らし出されるレンブラントの「夜警」は圧巻です。
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