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海の沈黙のmhのレビュー・感想・評価

海の沈黙(2004年製作の映画)
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ジャンピエールメルヴィルの長編デビュー作にして超傑作「海の沈黙」をリメイクしたテレビ映画で、「海の沈黙」の恋愛リミックス。
モノローグは一切使わないし、視点もぶれない。丁寧な物語運びで作劇セオリーも踏まえている。荒削りだったリメイク元をアップデートしつつ、恋愛というフィルターを通して語り直してくれる意味のあるリメイク。ただし、リメイク元にあったものすごい輝きは失われてしまった。
編み物ばかりしていたあの娘が視点人物に昇格。主人公も同然だった祖父は脇役に回る。娘とドイツの人がいい雰囲気になったところを邪魔するだけのヤツに成り下がる。
リメイク元の祖父は賢くてあいつだったらいろいろ察してくれそうなのに、こっちの祖父はなにか誤解してるようで娘を守ってるつもりになってるようだった。マジ邪魔なんですけど。
今回は作りがあまりにしっかりしているので、観客が自由に解釈することを許さない。どこからどう見ても恋愛もの。そのあたりが強みであり欠点になってしまっていた。
「フランス組曲」に似ているという感想がちらほらあるけどもっともだと思う。
ピアノで引き留めたくだり、爆発のあと、すべてを悟ったドイツの人などのシークエンスはクライマックスにふさわしい、素晴らしいものだった。
娘さんの指にはリングがあるんだけど、あれはどういうあれなんだろう。フランス語版Wikipediaを引いたけど詳しくは載ってなかった。
すごい美人という設定ながら、この役者さんはそんなでもないよなぁと失礼なことを思ったけど、これはこのところイングリットバーグマンの映画をよく見てるからだと思う。
ドイツの人はリメイク元よりイケメンの役者さんになったけど、知能は劣っているように見えた。そうなんか、全体的に知的じゃないんだよねぇ。
もっと美術や音楽についての語りが聞きたかった。
反知性を象徴するかのような戦争のさなかに、沈黙したまま知的で濃密なコミュニケーションを取っていたというのが良かったのになぁ。
つっても面白かったんだけどね!
mh

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