りっく

ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画のりっくのレビュー・感想・評価

3.5
男女3人によるダム破壊というエコテロリズムを描いた本作は、その計画を実行に移すまでの過程を丁寧に描きつつ、実行後にそのテロ行為を批評的に解体するところからが肝となる構造になっている。

ダムを破壊することで、社会にメッセージを発し、大きな大義を果たすことになる。だが、計画通りに行かない大小のアクシデントをくぐり抜ける度に、そのような目的は暗闇に溶け込み、ただ計画を遂行することが目的となっていく。

だが、彼らはその計画によって犠牲者を出してしまい、たったひとつのダムを破壊したところで何もなし得たことにならない茶番であり、自然の方が雄弁にメッセージを発し続けていると揶揄される。犯罪スリラーでありノワール的な雰囲気さえ漂わせる物語を無意味だと解体し、残されたジェシー・アイゼンバーグの焦燥感と空虚感こそが本作の味わいとなる。

ラストカットで彼が店内で携帯電話を使用する二人の客にぼんやりと目をやる。携帯電話があるからこそ、計画実行後はもう二度と連絡は取り合わず会わないと誓った三人が疑心暗鬼に陥り、また新たな犠牲を払うこととなる。携帯電話は年齢も性別も異なる人間同士を繋ぐこともできるが、その繋がりを断絶することもまた困難になる。携帯電話を壊したところで、それは変わらないかもしれない。そんな人間同士のやっかいな関わりについて描いた映画でもある。
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