りょう

スノーデンのりょうのレビュー・感想・評価

スノーデン(2016年製作の映画)
3.6
 エドワード・スノーデンの内部告発は日本でも大々的に報道されていましたが、なかなか“自分ごと”として理解できないままでいました。当時はこの作品を観ても理解しきれないところがあって、そのまま放置していた事件だったかもしれません。
 あらためて観てみると、現在のアメリカが覇権を失墜しかけていることは、この事件がきっかけだったのかと連想できます。ただ、アメリカのように大統領の改選や政権交代があって、官僚たちが刷新されても、おそらく国家体制の中枢機能にはほとんど変化がないんだろうと想像します。
 世界を監視する情報システムをまったく悪びれずに駆使するNSAの職員は、その組織にくみ込まれた1人のメンバーとして、自分の役割が最終的に何をもたらすのか、当然にわかっているはずです。NSAも内部告発のリスクを認識していながら、誰もが“自分をごまかす”しかないのかもしれません。どこの組織でも多少なりともあることです。日本の某政党の裏金も当人たちは“悪いこと”とすら思ってなかったかもしれません。本当の意味での“確信犯”です。
 ロシアに亡命したスノーデンは、最近のウクライナ侵攻やナワリヌイ氏の獄死をどのように思っているのでしょうか。当時はロシアでしか安全を確保できなかったのかもしれませんが、現在の彼が家族とともに平穏に生活できていることを祈るばかりです。世界中の人々の自由のために闘った本人が不自由な人生になっているなんて、あまりに残酷すぎます。アメリカに忖度することなく、彼のように優秀な人材をリクルートする民主国家がないんでしょうか。
 オリヴァー・ストーン監督の作品は、アカデミー賞の常連だったころ以来で観たかもしれません。ほとんどクセのないオーソドックスな作風になっていて意外でした。スノーデンを擁護する演出ですが、彼と国家をめぐる諸々の関係性を考慮すれば、ほとんど違和感がありません。
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