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恋するパリのランデヴーのtakのレビュー・感想・評価

恋するパリのランデヴー(2012年製作の映画)
3.7
 僕は中学以来ソフィー・マルソーの大ファンである。最近は監督もやったり、主演作がハリウッドリメイクされたり、年齢を重ねていい仕事をしているようだけど、いかんせん出演作品に恵まれないのか、日本では未公開作が多い。本作も日本では劇場未公開で、しかもダサい邦題が添えられている。いかがなものかと思いながら、いざ観てみると・・・中年男女の恋愛コメディとしてはなかなかいいじゃないですか。今の年齢になってこそわかる現実味や登場人物の心情も共感できることばかり。ソフィーがどうこう言うよりも、大人向けのロマコメとしてワクワクさせてくれる映画。

 主人公サーシャは作曲家。CM曲の仕事をこなしているが、いつか舞台音楽を手掛けることを目指していた。仕事先から帰る途中で出会った魅力的な女性シャルロットと突然恋におちる。彼女は夫と別居中の3人の子持ち。子供嫌いだと言っていたサーシャだが、シャルロットの部屋の洗面台修理をきっかけに、彼独特のユーモアで子供たちとも仲良くなっていく。ところが、シャルロットの夫は取引先のお偉いさんアランだったことを知る。サーシャは仕事を干されてしまう。その後、ブロードウェイで舞台音楽を担当するチャンスが到来。ところが仕事の相棒は彼女と距離を置いて仕事に専念するように言われるし、シャルロットとのこれからの関係を考えて思い悩むことに・・・。

 独身中年のサーシャが母親に世話を焼いてもらっているところや、シャルロットと子供たちとのやりとりが妙に生々しくて、同年代の自分が観ると、こういう展開あるだろな・・・と共感できる場面が多い。サーシャの台詞「キスはキス」は映画「カサブランカ」で流れるあの曲(As Time Goes By)の歌詞の一節で、しかもシャルロットの寝室には「カサブランカ」のポスター(しかも日本語版)が貼られている。なかなかいい場面じゃない。サーシャの部屋には「ウエストサイド物語」や「ヘアー」などのポスターが貼られていて、ミュージカルにただならぬ愛があるのだと伝える小道具としてうまく使われている。

 結末は絵に描いたようなハッピーエンドなのだが、子供を巻き込んで二人距離が近づいていく様子が大人の恋物語として好感度高い。二人が出会うずぶ濡れの場面にしても、洗面台トラブルをめぐるドタバタコメディ部分にしても、ソフィー・マルソーがそれまでの主演作で見せたことのないコメディエンヌ振りを発揮する。水道管から吹き出した水の圧力に倒されてパンツ丸見えになる場面なんて、アイドルの頃じゃ想像もできない。そうした場面をソフィーは楽しそうに演じているように観えるし、イザベル・アジャーニやエマニュエル・ベアールが同じことをやっても無理して演じてるように思えるんじゃないだろか。僕らはハリウッド製のロマコメで描かれるロマンスにしばしば日常を忘れさせてもらうけど、このフランス製ロマコメは子育てや仕事という日常をからめながら大人の恋が成就するまでを楽しませてくれる。だから僕らは共感できる。フランス映画は"人間模様"を描くのがお家芸。そんな伝統はここでも受け継がれている。
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