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THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦のpenのレビュー・感想・評価

5.0
全7章で作られた『機動警察パトレイバー』実写版の完結編となる長編劇場版。
レインボーブリッジを爆破した新型戦闘ヘリ「グレイゴースト」に三代目特車二課が挑むというお話。

ミステリーとしての『劇パト』、サスペンスとしての『パト2』。
作品毎にジャンルを変えて『パトレイバー』の映画を作った押井守監督は、本作ではガンアクションにかなり力を入れている。
過去作でも戦闘シーンの中にガンアクションはあったが、今回は作品の中心になってるといっていい。
あとなんで敵が戦闘ヘリなのかというと、押井監督が戦闘ヘリ映画『ブルーサンダー』が好きで、戦闘ヘリが出る作品を作りたかったからである。

中盤で展開される壮絶な銃撃戦を演出したのは辻本貴則監督。
敵の根城へ突入した特車二課と敵組織との激しい戦闘には興奮せざるを得ない。
特に太田莉菜が見せる銃剣術は、アクション監督の園村健介氏が開発した格闘術で、必見の出来。
約120分のDC版では約90分の劇場公開版よりも戦闘シーンが追加され、数々の敵を蹴散らす雄姿が拝める。
(ちなみにその銃剣術をアップデートさせたものが観られる作品が、押井監督の次作『東京無国籍少女』。主演の清野菜名が驚異の動きを見せる)

他にも、東京都庁周辺でのグレイゴーストと攻撃ヘリのドッグファイト、
二足歩行型ロボット(作中ではレイバ―と呼ぶ)「イングラム」とグレイゴーストの戦闘など、
「撃つ」ということに拘り予算と手間を掛けた映像に溢れている。

過去2作の中で押井監督はテロリストを描いてきた。
実写版となった本作でもそのスタンスは崩さず、灰原零という正体不明の女性を通して、監督自身が考える「現代におけるテロリスト」を描いている。
演じる森カンナの妖しさや彼女の経歴を辿る調査場面と相まって、この部分はホラー映画の様相を呈していた。
ただ劇場公開版ではその調査の部分は一切カットされているので、観客に考える余地を与えずに「何か謎な人」になってしまっているのだが。

描きたい要素をじっくり描写した為にその他の要素がかなりあっさりしていたり描写不足に感じる部分もあるものの、
押井監督の実写作品の中では娯楽性の高い作品になっている。
ディレクターズカット版が普及することを願う。

あと、高島礼子が最高です(という声が聞こえてくるほど大活躍)。
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