ティターニア

ある貴婦人の肖像のティターニアのネタバレレビュー・内容・結末

ある貴婦人の肖像(1996年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ざっくり言えば、周りから見ればろくでもない男に騙されて不幸な結婚生活を送る事になった、一見芯が強そうに見えて世間知らずな女性の話という印象で、こういった時代物には割とありがちな話の展開だった。若いイザベルは美貌で当時の女性にしては珍しく独立心溢れた溌剌とした女性で、多くの男性からプロポーズされるが、頑として受け入れず、自身の人生を自由に生きたいと望んでいたものの、芸術を愛する浮世離れしたオズモンドと半ば策略にはまった形で出会い、まんまと彼に騙され簡単に結婚してしまったあたりが、まず典型的な転落人生のありがちなお話だな…と思ってしまった。

オズモンドは話術が巧みで一見は魅力的だが、実際は妻の財産目当てで貴族に憧れを持つ尊大で利己的な俗物的な男だし、貴族で、過去にイザベルに求婚していたウォーバトン卿の真意も結局よく分からなかった。
オズモンドの娘パンジーは、イザベルが崇拝にも似た憧れの感情を抱いていた年上の貴婦人の娘だったが、この年上の貴婦人が個人的に凄く人間臭くて良かった。オズモンドとイザベルへの愛憎でぐちゃぐちゃになりながらも自分の矜恃を保とうとしている辺りに彼女なりの誇りと強さが見られ、主人公よりも人物的に興味深く魅力的に感じた。

昔からずっと側でイザベルを見守り続けながらも、結核の病で自身が短命である事を知っており、彼女に愛を告げない従兄弟ラルフの死の間際で、イザベルはようやく自身が彼を愛していること、彼と一緒にいる事が1番の幸せだと悟り愛を告白するシーンが1番のハイライトであったが、その後、従兄弟が亡くなり、若い頃からイザベルに求婚していた男から再び言い寄られ、はねつけても結局ほだされ熱いキスを交わすあたりで、またまたイザベルの弱さにげんなりしてしまった。

亡くなった従兄弟を1番愛しているならば、キスなどせずに冷たく拒絶した方が人間的にも女性的にも高潔さを感じるところだったのだが、単に誘惑に流されやすい女にしか映らず残念だった。
ラストシーンもイザベルの感情がよくわからないままで、しり切れとんぼ感が強く、蛇足。
原作を読めばもう少しイザベルに感情移入できるのかもしれないが、最初から最後まで彼女の本心がよく理解出来なかった。