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みかんの丘のkojikojiのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
4.4
#1275
2013年 グルジア🇬🇪/エストニア🇪🇪/ロシア🇷🇺映画
監督・脚本はザザ・ウルシャゼ

ノミネート: サテライト賞 外国語映画賞、 ゴールデングローブ賞 外国語映画賞
言語: ロシア語、 エストニア語、 ジョージア語、 アブハズ語

 たぶん、直接的にはフォロワーさん「ひろぽん」さんのレビューを読んでclipしたはずだ。
ただ、ひろぽんさんには、失礼だが、詳細は読まず、チラ見で決めたと思う。
先のレビュー「とうもろこし…」とセットで。

 実は初のグルジア映画であり、そこまでは期待してなかったが、これは傑作だった。
「ひろぽん」さんありがとうございます😊これだから映画はやめられない。これだからFilmarksはやめられない。
 時に、映画は観るものを、とんでもない、思いもしない世界へ連れて行ってくれる。この映画、間違いなく傑作だ。

 複雑な状況だ。グルジアは日本人が一番知らない世界と言われるコーカサス地方の3国アゼルバイジャン、ジョージア(グルジア)、アルメニアの一つ。日本では2015年から「ジョージア」と呼ぶことになった。
ロシアとの関係だ。
 
 この映画の主役のエストニア人は自国の独立ではなく、その地にたまたま住んでいることになる。

 みかん畑で働くエストニア人のイヴォとマルゴスが敵同士の傷ついた兵士を看病する姿を通じ、戦争の不条理さを描いた作品。
アブハジア自治共和国はジョージアからの独立運動の闘いを続けている。
 簡単に書けば、ジョージアがアメリカ側、アブハジア自治共和国がロシア側。ただ、大国の論理で単純にそれぞれの国の立ち位置を決めてはいけないと思う。

 元ソ連の一部だったグルジアはソ連解体を機に独立。その一部にアブハジア自治共和国があり、旧ソ連の復活を目指すプーチンの野望が重なって、ロシアはアブハジア自治共和国の独立を支援している。

 この映画の舞台は、そのアブハジア自治共和国のエストニア人集落。この集落ではみかん栽培を行っているが、ジョージアとアブハジア間の紛争により、多くの人が帰国してしまった。
 しかし、みかんの収穫のため、マルゴス(エルモ・ヌガネン)と、みかんの木箱作りのイヴォ(レンビット・ウルフサク)の2人はこの地に残っていた。
 ある日、マルゴスとイヴォは戦闘で負傷した2人の兵士を助けるが、1人はアブハジアを支援するチェチェン兵、もう1人はジョージア兵で、彼らはお互い敵同士だった。

 二人の反目はつい先ほど殺し合いをし、仲間が殺されて、宗教も絡んで根深い。家の中では絶対殺し合わないとの約束を取り付け、二人とも納得はしているものの、何かにつけて殺し合いかねない口論になる。
 何故ここまで憎しみ合うのか、イヴォとの会話の中で二人がそのことを自覚していく。
その過程が素晴らしい。

 イヴォを演じるレンビット・ウルフサクは役通りエストニア人だが、エストニアではきっと名優で通っているだろう。
すごく魅力的で上手い。
 思わず泣いた。しかも自分のこの涙がすごく気持ちがいい。
 と言ってもこの映画、決してお涙頂戴の映画ではないので勘違いのなきよう。

 みかん農家のもう一人のエルモヌガネンも自然で実にいい。
敵対する二人の兵士もいい。

この映画は絶対おすすめの映画。
先のレビュー作品「とうもろこしの島」とセットで、観ていただきたい。
「とうもろこしの島」も反戦映画ではあるが間接的なのに比べて、この映画は反戦映画そのもの。しかも考えさせる反戦映画だ。
 今の世界情勢だからこそ、観るべき映画だと思う。
この段階で今年度ベスト10入り。


 私は、この一帯の歴史を勉強しなければならないとつくづく思った。知らなさ過ぎる。

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(その後知ったこと、感じたこと)
監督はどう考えてこの作品を作ったのか、探したら見つかった。監督よメッセージからすると反戦映画であることは間違いない。そこに秘められた思いは複雑であっても。

🟢監督メッセージ
私の主観的な考えですが、人間にとって一番大切なものが芸術です。この「みかんの丘」には、人間の精神、尊厳にとってとても強い人間的なメッセージが込められています。私は映画、芸術が戦争を止めることが出来るとは決して思ってはいません。しかし、もし戦争を決断し、実行する人たちがこの作品を見て、少しでも立ち止まり、考えてくれるならば、この映画、芸術を作った意義があったと考えています。
「みかんの丘」ザザ・ウルシャゼ

🟣その後感じたこと
 映画はジョージア、エストニア合作映画だから、視点はジョージア兵士「ニコ」とエストニア人のイヴォとマルゴスの方になる。舞台は敵地アヴハジア自治共和国、そしてアハメドは敵なのだ。
アハメドはチェチェン人のロシア傭兵でアヴハジア自治共和国独立を支援している。
アハメドがチェチェン人なら傭兵であっても歴史的に考えれば、ロシアは信用していない。したがって、個人的には独立戦争(果たしてこれが独立なのかどうかも不明)これは当てにならない。特に最後にチェチェン語を喋らなかった、あるいは喋れなかっかことを考えると当てにならない。
アハメドはイスラム教。これは間違いなく事実。
この一帯でイスラム教を信じる者はチェチェンにかなりいることは事実なのだが。
このアハメドがどんな経路でここに来たか、どんな立ち位置にいるのか、これはわからない。



2023.07.04視聴310
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