紅孔雀

遥か群衆を離れての紅孔雀のレビュー・感想・評価

遥か群衆を離れて(2015年製作の映画)
4.5
女主人公の身勝手さに、皆さん、結構ドン引きされてますが、そのもどかしさも含め、文芸ロマン映画の良作だと思いました。
19世紀のイギリス。未だ人と自然が無理なく共存する農場を舞台に、当時としては異端の、自立した女性の恋愛遍歴を描く。麦穂が陽光に煌めく中、幼な顔のキャリー・マリガンの毅然とした演技に唸らされます。
このマリガンちゃん、2人の優しい男性を袖にして、浪費家でプレイボーイの軍曹を選ぶのですが、この選択がレビューワーさんたちから不評の嵐。ただ、理屈では解けないのが女心で、“女性は、頭のいいヤクザが大好き”という動物行動学者・竹内久美子氏の名言を思い出したりもしました。こうした微妙な女性心理を描いて納得させるあたり、やはり原作の力と言うべきでしょうか。トマス・ハーディ、さすが文豪と言われるだけのことはあります。
そして最後に女主人公は、身近にあった幸せの青い鳥を見付けます。隣の農場主が可哀想ではありますが、そんなことに頓着せず、まさかのハッピーエンドに雪崩れ込み。このあたりのユルイ展開も実に、英文学の古典らしいと思いました。
PS:ヴィンターベア作品は初体験でしたが、この監督、ランス・フォー・トリアーのお仲間なんですねぇ。意外でした。
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