ルサチマ

だれも知らない建築のはなしのルサチマのレビュー・感想・評価

4.0
伊東豊雄が映画の最後に現代日本の建築について、「批評される表現はとっているけど、批評する相手がいない」と語り、中身のなさに批判意識を向けるが、この伊東豊雄の発言に限らず、バブル崩壊後の建築家が必要とされない建築の時代というのは、映画でもほとんど同じ状況にあると言い換え可能だ。個人主義の作り手はいても磯崎新のように、俯瞰したビジョンで人材を選び、配置していくようなキュレーターの役割を担う存在がいないということもそうだが、業界全体が個々の「島」を持つことに目を向けすぎてるというか。
無理やり建築と映画を結びつける必要はないが、この5年くらいで過剰に「まち」映画が撮られているものの、どれも映画単体として批評性を宿さずにいるのは、地域性に対抗する形で映画そのものが主張をしてないせいだと思われる。「まち」というか「島」の固有性を肯定し、保持することにばかり目を向けて中途半端な人間との共生を求めてきた結果の小ささが溢れかえったというか。コロナ禍以降、建築や映画の縮小化は益々進んでしまったように思えて悲しい。
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