emily

パパ、アイ・ラブ・ユーのemilyのレビュー・感想・評価

パパ、アイ・ラブ・ユー(2012年製作の映画)
2.8
最愛の妻を亡くし、2歳のアイザック二人きりの生活が始まる。俳優を夢見てオーディションを受ける毎日に、息子の世話は重い負担としてのしかかるが、なんとか今の生活を保とうと、妻を亡くした悲しみにしっかり向きあえないまま、息子にもその真実を説明できないでいた。

 日々を斜め後ろから捉えるため息交じりの、不穏な父親の表情。サイドミラー越しに見る子供には見せない本当の顔、しかし子供には明るい光が降り注ぎ、お金のない日々、仕事が決まらないイライラを不穏な空気感の中見せる。しかし子供は容赦なく、ピュアな質問を投げかけ、リアルな親子の距離感を見る。終始ドキュメンタリ色が強く、自然な会話や行動を撮ってる感じではあるが、そこから浮かび上がる、妻の死をまだ受け入れることができていない彼の身勝手な行動の数々も傍からみたら苛立ちに繋がるが、本人にはそんな意識はない。金魚を使ってママの死をアイザックに伝える父親、それは同時に自分へ事実を伝える行為でもある。

 息子以上に受け入れられていないのは彼自身なのだ。彼がそれをできていないのに、息子にどんな言葉で伝えてもただの言葉の羅列になってしまう。大事なものが見えた時、守りたいものが見えた時、そのためには前を向いて進まなくてはいけない。妻の死を父親が受け入れ、それをしっかり悲しみ乗り越えることで、二人の絆は本物になるのだろう。
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