MasaichiYaguchi

モヒカン故郷に帰るのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

モヒカン故郷に帰る(2016年製作の映画)
4.0
サプライズで沖田修一監督、吹奏楽部員役で出演した富田望生さんと小柴亮太さんの舞台挨拶のあった上映回で鑑賞。
この舞台挨拶から伝わって来たほのぼのとした温もりそのままに、瀬戸内海に浮かぶ島を舞台にした家族のドラマが悲喜こもごもに展開する。
本作はタイトルからも分かるように、木下恵介監督作品で邦画初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」を下敷きにしている。
この作品は、都会と地方のギャツプ、特にカルチャーショックを軸にポップにコメディを繰り広げている。
本作も同様に、主人公・永吉の生活の場である東京と故郷の戸鼻島、そしてデスメタルバンドのボーカルである彼と、熱狂的な矢沢永吉ファンの父・治とのギャップ、更には今時の女の子である永吉の恋人・由佳と、熱い広島カープファンの母・春子との対比があり、これらのギャップが何とも絶妙で、彼らを演じる松田龍平さん、柄本明さん、前田敦子さん、もたいまさこさんの夫々の持ち味によって、賑やかで温かな家族のアンサンブルが奏でられている。
モチーフとなっている矢沢永吉さんの曲が様々な形で登場して彩る本作は、曲の素晴らしさだけでなく、矢沢永吉さんの生き様のかっこ良さまでさり気無く響いてくる。
その生き様を含めて、親から息子へ、息子からその子へと連綿と受け継がれていく絆や思い、そして故郷の人々の優しさがゆったりと、まったりとした展開から心地よく伝わって来る。
子を思う親の気持ち、夢を追う子の背中を押す親の深い愛、そして子も親になって初めて知る親の恩。
コミカルな展開に笑いながらも、彼らが抱くその心情に何度も目頭が熱くなってしまいます。