広島カップ

緑はよみがえるの広島カップのレビュー・感想・評価

緑はよみがえる(2014年製作の映画)
3.8
第一次大戦中のさなか、イタリアとオーストリア国境付近の雪山で睨み合う両軍。
イタリア軍の兵士達は雪の下の塹壕の中で息を潜め敵に居場所を知られないように皆ヒソヒソと話す。
薄暗い塹壕の中の兵士の表情は光度ギリギリの所でようやくカメラが捉える。
繊細なカメラは監督の息子ファビオ・オルミ。
外は一面の銀世界で夜になると静謐が支配し幻想的といっても良い風景になる。
敵の砲弾が飛んで来るまでは、もしかしたらここは戦場の最前線ではないのではないか?と感じてしまう。

これはエルマンノ・オルミが彼の父親から聞いた話を映像化したもの。
「いいかぁ、ワシらはな寒くて暗い塹壕の中で震えていたんじゃ。外はそれはそれは静かで美しい風景が広がっていてな...」などという父上からの話を聞いているオルミ監督の様子が目に浮かんで来ます。
その話を忠実に丁寧に再現しようとしたのではないかと感じます。

本作の製作された2014年には『フューリー』『アメリカン・スナイパー』などの戦争映画が発表されましたが、これらアメリカ映画とは全く違ったアプローチで戦争を描いています。
アメリカン...は普通の市民が英雄兵士になる様子を描いていました。本作も普通の市民という点においては同じですが、彼らは塹壕の中で家族や恋人からの手紙を待ち侘びるあくまでも一般市民である視点で描かれています。
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