mochi

666号室のmochiのレビュー・感想・評価

666号室(1982年製作の映画)
3.8
歴史的資料として面白い。結構知らない映画監督も出ていたので、彼ら、彼女らの映画もぜひ観てみたいと思った。普通のドキュメンタリーのように、聞き手が質問をあいついでしていくのではなく、「映画とは、失われつつある言語で、死にかけている芸術か?」という一つの質問について、誰もいない部屋でそれぞれの映画監督が11分以内で自由に語る、という手法をとる。この手法がそれぞれが語りたいことを語ることを可能にしている。一方で、質問に対して真正面から答えていない映画監督も多いので、その点を消化不良に感じるかもしれない。
結構各監督見解はまちまちで、いずれも正しく思えるのは、「映画とは、失われつつある言語で、死にかけている芸術か?」という問に対して、現代においても否定的な回答と肯定的な回答が共存しているからだと思う。映画の芸術性は退行し、以前ほどの社会的に影響力を持っていない。しかしながら、これほどまで便利に動画を観ることができる社会においても、映画は存在し続け、映画経験の特殊性はいまでもあるように思える。市場規模も大きくなっている。このような状況は、先述の問いに対して肯定的にも否定的にも応えることを可能にするはずである。
ゴダールの映画についての映画が増えたというの分析には納得で、非常に面白い考察だと思う。さらに言えば、映画の影響力の低下や、死に瀕していることをある意味で肯定的に捉えているのも面白い。この発言を聞いて、芸術ではなくなってしまった芸術が、再び芸術としての地位を獲得するためは、その芸術が完全な死を迎えることが必要条件なのではないかと思った。レンブラントの絵が芸術作品としてみられるのは、絵画経験が一般的経験ではなくなったからではないだろうか。
それぞれの映画監督全部フルで話したこと使われてるのかな。一言で終わった人と書いたけど、ヴェンダースが選択してるんだとすると、なんかそれはあまり良くない気がしなくもない。順番に関しても同様で、インタビューした順であってほしい。最後がユルマズ・ギュネイのインタビューなので、あまり明るくない終わり方になっているが、一方で彼やヴェンダースの覚悟がよくわかる良い終わり方かもしれない
mochi

mochi