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フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るようにのrichardのレビュー・感想・評価

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石内さんの、何かもっと秘めたるものをみたかったな、ききたかったな、とすごくすごく思ったけど、撮られた写真が画面にうつしだされて、なんだか腑に落ちざるをえなかった。
そうかあ、このひとは、映画をとおして話をしていたんじゃなくて、ずっとフリーダと対話をしていたのね。それをわたしたちは、そばで見させてもらっていたのね。と思った瞬間、彼女(たち)を捉えるカメラが、ていねいに、その花園めいた空間を壊さないようにしていたんだなあというのと同時に、その、神聖な儀式のような時間に、切り込むすべを失っているような感覚が、わたしのなかにも流れこむ。圧倒的…!と感じているのか、恐れおののいているのか、そういう感じが、伝わってくるような。
彼女はあんまり自分のことを話すのは好きな人じゃないのかなとも思った。写真家っていろんな人がいるからおもしろいね。わたしの話はいいのよ、この人の生きた証を見てちょうだい、ほら、これ、わたしが撮ったのよ、って言われてる感じがした。

メキシコって激しくて情熱的でいつもいつもお祭りって感じのイメージだけど、澄んだ空に、柔らかい空気と、命に真摯に向き合っている人々の並々ならぬ想いを静かに感じさせる。

フリーダの生きた証をのこしてゆく石内さん。
そんな石内さんの生きている証をのこしてゆく、小谷監督。尊敬を感じる映画だった。でもそれが愛と信頼であったのか、は、また別の話かもしれない。
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