バナバナ

彼女が目覚めるその日までのバナバナのレビュー・感想・評価

彼女が目覚めるその日まで(2016年製作の映画)
3.0
ニューヨーク・ポストに勤める若い女性スザンナが謎の病気にかかり、誤診に継ぐ誤診で、
危うく精神病院に送られそうになる…という実話。

この、彼女が発病したのが“抗NMDA受容体炎”という、2007年にようやく解明された病気。
この病気が『エクソシスト』(1976年)や『エミリー・ローズ』(2005年)で“悪魔憑き”と言われた症状を引き起こした原因だったのだ。

スザンナも、最初に感情を抑えられない、幻覚が見える…が始まったところで、アメリカらしく合成麻薬でも使っているのではないかと医師に疑われ、
次にアルコール依存症、次に双極性障害、次は統合失調症に間違われ、そしてとうとう原因が分からないまま精神病院に送られそうになる。
しかし、痙攣を起こす統合失調症なんてあるのか?

映画ではギリギリのところで病名が分かり、なんとかなったが、スザンナの脳は炎症の為に既に10%も損傷していた。
これがもし精神病院に送られていたら“木を見て森を見ず”の医療だから、彼女の脳は損傷は進み、
もしその後に病気が特定されたとしても、その頃には手遅れになっていただろう。

果て、これが日本だったらどうか?
アメリカでスザンナが発症したのが500人目手前くらいだったから、日本でも、この病気が発病したのに原因が特定されずに精神病院に入れられ、手遅れになっている人が何百人も居そうで怖い。

映画自体は、回復したスザンナさんの手記通りに進むので、
この様に症状が始まり、この段階ではこんな様子だった…
という部分がほとんどなので、
ストーリーに山場が無く、正直映画としては面白くなかった。

しかし、彼女が発症したのが2009年。
まだアメリカ国内の医師にさえ、この病気が知れ渡っていない時期に、しかも、認知症の治療薬さえ未だに開発されていないというのに、
よくぞまあ、こんな難しい病気の治療法がこの時点で解明されていたものだと思う。

数年前、アブリル・ラビーンがライム病を発症して起き上がれなくなったが、なかなか病名が分からなくて治療が出来ず、
専門家からも詐病と言われたりして辛かった、と告白していたのだが、
病気だと認めてもらえない、また、違う病気と診断されて、
関係無い治療を受けさせられてしまう可能性は誰にでもあるし、意外と高いだろう。
この作品では非常に珍しい病気だったが、対岸の火事とも言えない内容だったので、面白くはなかったが興味深い作品ではあった。
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