天鵞絨

サリヴァンの旅の天鵞絨のレビュー・感想・評価

サリヴァンの旅(1941年製作の映画)
3.5
「お前は苦労知らずのお坊ちゃんだ。そんな奴に貧困層の苦悩が描けるか?」と言われたサリヴァンは、ごく僅かな資金と身なりで旅に出ることに。経営陣二人の嘘が、サリヴァンを駆り立てた。


「浮浪者の気分にひたるぞ」
この台詞ね。さっきも根なし草の人々に「労働問題について考えたことは」って話しかけてうんざりされた場面。彼等にとってはそれすら考える余裕も無いだろうし、変える手だてもない。
その後、ラスベガスの僻地でトレーラーと合流。そりゃあ誰だって衣食住が確保されている場所が良いに決まっています。

ホームレス生活を軽減した後、モデル代として浮浪者に5ドルをあげることにしたサリヴァンですが、金を撒いても根本的な貧困の解消にはならないんですよ。でも皆手取も無いから、給付金で解決した気になる。(その場しのぎにはなるし、当事者からしたらありがたいことには代わり無いけどさ…)
この、裕福層と貧困層の埋まらない溝をさらっと描いているのが中々良い(?)場面だと思います。

そしてなんやかんやあって刑務所での生活を経た後、「娯楽を限られている人達や環境がある。ならばせめて、そんな人々を元気付けるような笑いを提供したい」という落とし所だったのが良いなあと思いました。

「それに私は苦難を味わってない」
「笑いだけを支えに生きてる人達がいる
わずかだがこの苦難の旅を支えてくれている」
天鵞絨

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