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シネマの天使のTSのレビュー・感想・評価

シネマの天使(2015年製作の映画)
2.9
【良いところと悪いところの差が激しすぎる】
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監督:時川英之
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:94分
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正直評価が難しいです。でも言えるのは
「中盤だけ切り抜けば名作」
ということかもしれません。
というのも今作、良いところと悪いところの差が激しすぎると思います。題材がとても良いだけに残念でならない作品でした。

実際に広島県にあった老舗映画館、大黒座が2014年8月31日をもって閉館するということで、地元テレビはインタビューをする。働き始めたばかりの女性スタッフはそんな中、営業終了後の映画館に点検のために向かうのだが。

まず良い点から。

これは実際の話でして、閉館してからの9月に実際の現場で撮影したそうです。この大黒座は122年の歴史をもっていて、開館したのが1892年。明治時代において教育勅語が出されたあとあたりです。映画鑑賞方法の多様化による観客不足などの経営難、また建物の老朽化が理由で長い歴史に幕を閉じるというものです。
その中で、最終日にたくさん来る人々のシーンがとても良かったです。人々にとって映画館は心の拠り所だったのです。何か行き詰まった時、気分転換をしようとした時はみんなこぞってこの映画館に通ったそうです。同じスクリーンで何かを受け取って帰る。作中でも言われていましたが

「映画館てのは教会みたいなもんだよ」

という言葉に大変共感しました。僕ももしかしたらそんな感覚で映画館にいってるのかもしれない。病んでるとかではなくむしろ自分のご褒美として映画館に通ってる節もありますが。

こういう大衆文化を温かく描くのは良いことだと思います。最終日に、みんなが「大黒座今までありがとう。」というメッセージを壁に書いているのを見たら泣けてきました。やはり愛されたものがなくなるのは悲しいことです。しかし、実物は失われても、みんなの心の中に生き続ける。これがなんとも表現しにくい仄かな感動を与えるのだと思います。

さて、良くない点について

…本郷奏多がまるでいらない!!!
なんだこれは!!!映画監督が何だか知りませんが明らかに物語の進行の邪魔。なんだよあのシークエンスは。ファンタジックにしたい気持ちはわかりますが、ぶっ飛んでる。まさに蛇足極まりない。おまけに本郷奏多の演技が全く好きになれない。『進撃の巨人』のバイアスがあるかもしれませんが。本郷奏多のファンの方には申し訳ないですが。。
あと仙人の必要性が皆無。なんなのだあれは…とここまで見ると、タイトルもさておき、さぞファンタジー映画にしたいという意図が見えてきます。
しかし全てを覆し唖然とさせるラストあたりのシーン。その場にいる人達はみんな感動してますが普通に考えてみましょう。不法侵入、不法滞在ではありませんか。なんだよ、途中までファンタジーな感じでしたのに、いきなり現実に引き返させられる。しかもこれが現実だとしたら、ファンタジーとしといた方が整合性がよかったくらいの結末。全くもって腑に落ちません。

それに最後あたりのあのセリフは聞き間違いでしょうか?(笑)大黒座が有終の美を飾ろうとしてるのに…
やはり人生というのは「出会い」があれば「別れ」があります。これが良いのです。「別れ」があるから尊さを知り成長していくのです。「別れ」がなければ成長しないと僕は思っています。
聞き間違いでありますように。。でなければ未練タラタラのトンデモ映画でしかありません。

ということで、ベタ誉めしつつもかなり文句を言えるという稀な奇作でした。まあ題材は良いですので、細かいことは気にせずにみたら楽しめるし感動できると思います!
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