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スパイダーマン:ホームカミングのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

完璧にエモいトビー・マグワイア版や二作しか作られず、恋人の死で終わったことにより観客に深い傷を残したアンドリュー・ガーフィールド版のことが頭にあり、どうしてもトム・ホランド版を観る気にはなれなかったが、今後もMARVEL映画を楽しむ気があれば避けては通れない道なので観た。

蜘蛛に噛まれる下りやベンおじさんの事件を思い切りカットし、アヴェンジャーズ仕様にカスタマイズされたスパイダーマン。女の子との恋愛よりもなによりも、スタークさんに気に入られることが最上課題という。

スタークはスタークで、出先でスマホ越しにピーターを叱りつけたあと、周囲に"I'm talking to a teenager, my son."と弁明する。後継者扱いしている。

ピーターの通う高校でしばしばキャプテンのビデオが流される。居残り授業で彼の映像の途中でピーターが抜け出したことからも、スタークさん至上主義の彼の立場が分かる。最後の最後までキャプテンは教育係として使われている。MARVEL映画のエンディング後に次作への繋ぎ映像が見られることを知っている観客が今作でも長い長いエンドクレジットを耐えると、キャプテンが「忍耐が重要です」と言うだけの映像が流れ、「これあと何回やるの?」という彼のセリフで終わる。ひょっとしてこういう役割が嫌で、『エンドゲーム』後に過去回帰したとき再びキャプテンには戻らなかったのでは、と思わされる。

工作好きのピーターと、洞窟で一からパワードスーツを作ったトニー・スタークの姿が重なる。0から、もしくはスクラップから何かを作り上げる人間の話が本当にアメリカ人は好きだな。それができることが有能さの証になっている。


翼男のヴァルチャー(ハゲタカ)役をマイケル・キートンが演じる。『バットマン』や『バードマン』のイメージがあるからか、とてもしっくりくる。彼も彼で、ハゲタカのごとく集めたガラクタから何かを作り出す人間だ。また、白人男性ながら黒人女性と結婚するリベラルさや娘を愛するいい父親の側面もある。そのためか絶対悪とは描かれておらず、お縄になるだけで済む。彼がスパイダーマンに殺されリズが闇落ちするルートかと思ったが、そうならなくてよかった。

ゼンデイヤ演じるMJではなくリズという他の女の子との恋愛を絡め最後に彼女をフェイドアウトさせたのは、あくまでもトニーとの関係性が主眼だったからか。

今作のスパイダーマンはやたらと重い物に耐える描写が多い。危機に三度遭い、二度目まではアイアンマンに救われ、三度目は自分の力で切り抜ける。言わばアヴェンジャーズ加入のためのイニシエーションの映画だ。私はMARVEL映画をそこそこ面白く観てるからいいが、それ以外の人にとってはこの通過点のような映画が魅力的かどうか分からない。

"Friendly neighborhood, Spiderman"(良き隣人)というスパイダーマンのテーマ曲の一節が何度も出てくる。彼のスタンスやスケールを表す言い回しなのだろう。
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