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薩チャン正ちゃん 戦後民主的独立プロ奮戦記のmhのレビュー・感想・評価

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山本薩夫、今井正、新藤兼人、家城巳代治という四人の名監督を中心に、戦後日本でいち時代を築いた、独立プロダクションによる映画製作についてのドキュメンタリー。
東宝以外の映画会社は縁故採用が多かったいっぽう、有能なものをあつめた東宝では労働運動が異様な盛り上がりを見せてしまう。映画製作で有能=意識も高いというこのあたりが皮肉。それがいわゆる日本の労使闘争史(もしくは日本共産党史)に燦然と輝く東宝争議。
というわけで、有能映画製作者たちがパージされるという背景も詳しくやってくれる。しかるに、この頃の有能映画人は左翼思想の持ち主という側面も垣間見える。
ハードル高いのは、取り上げられる映画をちょっとは見ていないと十分に楽しめないところ。「キクとイサム」「ひめゆりの塔」「太陽のない街」など、たまたま見ててよかった。
・黒澤明も山本薩夫も緻密な絵コンテを書いてくる。
・今井正はアドリブで取る。
・ストライキが題材の「太陽のない街」でエキストラのストライキ。
・金策に苦労する宇野重吉VS働いたスタッフに金払わなかった山本薩夫のケンカ。
このあたりのトピックを面白く見た。
パージされてもヒットを連発して、大手映画会社から呼ばれるようになるの流石だし、そんな山本薩夫も絵コンテに手を抜かなかったというのが、自分が創作する上でのヒントにもなった。
実現しなかった山本薩夫の「悪魔の飽食」まじ見たかった。
見てない映画もいっぱいあったので、ぼちぼちそれらも見ていこうと思っている。
つーか、そのものずばり東宝争議の映画はないのかね?
面白かった!
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