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バービーのohassyのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.5
「バービー」の見どころがわからないだって?
僕が説明してあげよう、まったく君という人は仕方がないな。

本作のテーマは、「あらゆる決めつけから人は逃れられない」ということ。
バービー人形が女性の解放と切っても切り離せないということは知っているよね?
映画の冒頭で赤ちゃんの人形を持って遊ぶ女の子たちに、新たな意識を芽生えさせたあのシーンだ。
あれはSF映画の金字塔、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」を模したシーンなんだけれど、気付いたかな?
つまりバービー人形が「女性の夜明け」をもたらした、という暗喩なのさ。

一方で人間界に訪れたバービーは、彼女が住む女性が中心の夢の世界とは真逆の男性社会(「家父長制社会」の方が正しいかな?)に戸惑い、さらには自分を女の子たちの憧れの存在だと思い込んでいたところに「ファシスト」などと罵られることで、落ち込むんだ。
それはつまり、女性を家庭、母親業から解放したはずのバービーが、いつの間にか新たな枷になってしまっていた、ということなんだね。
常に理想の女性像を売り出し続けることで女性を応援していたつもりが、夢や理想の押し付けになっていたというわけだ。
皮肉なものだよ。

一方でバービーのおまけとして存在しているケンは、ずいぶんな描かれ方をしていたね。
常に半笑いで眺めていたくなるような、まるで中身のない男。
ビーチにいるだけの、見た目が良いだけの男。
それがケンだ。
家父長制を目の当たりにしたケンが、力と雄性でいっときの王国を築くくだりは、まるで家の中だけで威張り散らすDV男だったね。
虚構の中でいくら偉ぶっても現実では何の役にも立たない、どうしようもない男の象徴だ。

でもね、ケンも可哀想なんだ。
女性が家庭や理想の女性像に縛られてしまっているように、男性だって男らしさやできる男みたいな理想に縛られ、コンプレックスを感じているんだ。
そもそも男って生まれた瞬間、つまり精子の時から女性に受け入れられたくて必死で競争する生き物だよね。
多くの動物がそうであるように、生命を生み出す能力が無い雄は、雌に認められてはじめてその価値が生まれる。
ケンたちがバービーたちの気を引くために争いあう姿は、実はとても悲哀に満ちたシーンなんだ。
女性が存在しない世界には、男も必要がないのさ。
悲しいことだけれど。

だから本作は、フェミニズムだけに捉われず、現代社会に生きる人すべての生きづらさまでしっかり描かれていて、どんな人にも目配せをされた緻密な作りにもなっているんだ。
もちろんバービーを超美形白人女性が演じていることに、嫌悪を示す人もいるだろう。
でもマーゴット・ロビーだって望んでそういう外見で生まれたわけではないし、きっとそのステレオタイプな美貌を悩んだこともあるはずだよ。
実際よりバカに見えたりね。

つまり本作は、資本主義社会に作られた、人の理想、あるべき姿、あるいは妬みの対象から、一刻も早く解放されることを気づかせてくれる作品なんだよ。
おもちゃの世界での自分探し、そして人間世界との関連性は「レゴムービー」にも通じるね。
ウィル・ヘレルが近い存在としてどちらの映画にも出ているし。
バービーを作るマテル社が、この内容で製作に協力しているというのはとても感心するけれど、作品の根底に通っている想いを深いところで理解しているからだろうね。
サンクチュアリとは違うね。

ところで「男は説明好きだから」のくだりは最高だったな。
数ある爆笑ポイントでも「フォトショップの使い方がわからな〜い」は一番笑ったよ。
それと「ゴッドファーザー」についての説明もおかしかった、僕なら「ダークナイト」にするけど。
男って「ダークナイト」が好きだろう?
「ダークナイト」って作品はね、まさに男の根源的な欲求を、莫大な予算と時間をかけて表現した映画なんだ。
知ってる?ダークナイトでジョーカーを演じたキース・レジャーの演技が凄すぎて、本当はNGだったシーンが採用され文字数

#mansplayning
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