冒頭は全裸の女性がダンスしているシュールなシーンで、この映画に必要なのかよくわからないシーンで始まりましたが、その後は凝った重厚な内容に惹き込まれていきました。
主人公のスーザンはお金持ちの夫と暮らしており、不眠症に悩まされています。そんなある日、昔の夫エドワードから彼が書いた小説が送られてきました。最初のページに「スーザンへ」と書かれたその小説のタイトルは「ノクターナル・アニマルズ」（夜行性の動物）。スーザンはその小説を読み始めますが…というお話です。
この映画は「現在」「小説の中の物語」「過去の回想」と3部から成り立っており、それらが複雑に絡まりながら物語が進行していきます。
この映画の特徴的なところは、小説家の元夫エドワードも小説内の主人公も、どちらもジェイク・ギレンホールが演じているところ。つまり一人二役。
なので今見ている映像はどのパートなのか、小説内の物語なのか過去の回想なのか、それとも現在なのか。頭の中が「？？？」となる瞬間も何度かありますが、それは恐らく現実と過去と創作話とが混乱したスーザンの頭の中を表しているのかと思います。
ですが、すぐにどのパートかはわかるようになっていて、程よい塩梅で頭をかき乱してくれます。私は時間軸が行ったり来たりする映画が好きなので、この演出は楽しめました。
この映画のポイントは「なぜエドワードは元妻に自分の小説を送ったのか」だと思うのですが、観客に解釈を委ねる形でエンディングを迎えます。委ねられたからにはなんとか解釈してみましょう！（苦手）
以下ラストのネタバレを含んだ個人の意見です。
これは、やはりエドワードのスーザンへの復讐なのか？でもそれでは解釈が浅いような気もします。
考察などもいくつか読んでみたのですが、いまいちどれもしっくりきません。私が映画内の詳細を忘れていたり気付いていないからだと思いますが。
結果、やはり“復讐”が一番しっくりきました。
エドワードはスーザンに復讐したい気持ちを20年も持ち続けていたのかと思うと気の毒にも思います。ですが最後に姿を現さなかったのは、本を送った段階で復讐心は昇華できたのかなと思います。これからはようやく前を向いて人生を歩めるのかもしれません。
一方、スーザンも過去の自分、現在の状況と対峙し新たな人生を歩み始めるかもしれません。
復讐がお互いにとって新しい人生の始まりになったんではないかな、と希望を感じる解釈にしたいと思います。
