ゆみモン

あつもののゆみモンのレビュー・感想・評価

あつもの(1999年製作の映画)
3.2
あつもの(厚物)とは、”花弁が管状で、まり状に厚く盛り上がった頭花を開く大菊“…ということを初めて知った。

北陸の小さな町で家庭を顧みることなく「消防と菊作りだけの人生」を過ごしてきた真面目でおとなしい杢平は、定年を機に息子夫婦の住む関東近郊へ身を寄せる。 妻の夏美は東京郊外の精神病院に入院する。息子夫婦も土地の権利や借金などで問題を抱えている。 そんな中で杢平は、ひたすら菊作りに精魂を傾け続ける。 北関東には全国的に名を知られた菊作りの名人の玄一がいる。彼は、菊作りにかけては折り紙付きの実力者だが、 偏屈で欲深い性格から地元の同好会になじめず、山奥で一人暮らしを続けている。
それぞれに孤独を噛みしめながら、菊を咲かせることに情熱を傾けてきた老齢の男二人が、音楽の才能に行き詰まり悩む若い女ミハルを介して再会する。 幼い頃、玄一の作った厚物に魅せられてから、自分の人生の大部分を菊作りに賭けてきた杢平であったが、玄一は孤独にあがき、ミハルの若さに迷って醜悪な姿をさらす。 …
この映画は、二人の菊作り名人の孤独と情熱の哀歓を静かに描いている。

キャスティングが絶妙だ。杢平役の緒形拳は、これまで“女衒と極悪犯が最高”だと思っていたイメージを払拭してくれた。
玄一役のヨシ笈田の醸し出す胡散臭さもたまらない。
財津一郎、中村嘉葎雄ら、他の初老男性陣もさすがである。