Chiaki

マダム・フローレンス! 夢見るふたりのChiakiのレビュー・感想・評価

4.8
私にとってこの映画は、今公開されてる映画の中でも、特別違って見えます。それは紛れもなく、ヒュー・グラントとメリル・ストリープという豪華キャストにあります。

私はヒュー・グラントの大ファンであり、彼は私の中で不動の1位。それは、ただ好きというだけではなく、私の映画の原点であるからです。彼の事を知り、演技というより、声や仕草に魅力を感じ、そして定着してきた役柄に強く共感を抱き、気づけばどっぷりとはまっていました。よく言う言い方をすれば、彼は私の青春です。世代的に「ヒュー・グラントて誰?」なんて言われ続けてきたけど、彼のおかげで映画を好きになり、次第にヒュー・グラントに限らず「その俳優さん私も好きだよ」と言ってくれる人が周りに増えてきました。そんな彼をスクリーンで観られる機会はとても貴重で、この映画の日本公開が決まった時は心の底から嬉しかったです。

そしてメリル・ストリープ。初めて『マンマ・ミーア!』を観た時、ミュージカル映画の素晴らしさを教えてくれました。メリルが演じた破天荒な母親は、女性の素敵な部分を全て映しているように思えました。『マディソン郡の橋』を観た時は、決して若くない男女のラブシーンに少々戸惑いを覚え、有名作品だからといって、何でも自分にはまるわけではないんだという初体験をさせてくれました(笑)ただあの頃は(今の私が言うのもなんですが)まだ若くて、それこそヒュー・グラントのラブコメばかりを観ていたので、今観たらまた変わるのかなと思います。それでも良い思い出です。『プラダを着た悪魔』では、圧倒的にアン・ハサウェイが人気でしたが、私はメリルが演じたミランダがすごく印象に残っていて、とても大好きなキャラクターです。


私の映画人生で、ずっと夢やドキドキを与えてくれた2人の共演は、絶対に見逃せませんでした。そして久々にスクリーンでその姿を観ていた時間が、とても愛おしく感じられました。
今、乗りに乗っている若い俳優さんの中にも大好きな人はたくさんいますが、そのような人には大抵年に1回は映画館で会えます。でもこの2人、特にヒュー・グラントに至っては、いつその日が来なくなるか不安で仕方ないのです。更に欲を言えば、主演映画が観たいのです。

良いのはキャストだけかというと、全くそんなことはありません。メリルが抜群の音痴を披露する前半、会場は笑いの嵐。音痴なメリルもおかしいけど、その周りの人々の反応が余計に笑いを誘います。メリルが歌うたびに同じシーンが続くけど、その空気感がクセになってしまうような感じでした。
普段の生活で人の欠点を笑うことは、大変失礼に当たることです。でもそれが堂々とできる。罪悪感もなし。ある意味画期的なコメディだと思います(笑)

一見、お金持ちの我儘マダムの話に聞こえますが、フローレンスの人柄やピュアな性格から、彼女は本気で人の為に歌いたいのだということが伝わってきます。カーネギーでのコンサートも、従軍兵たちの心と体を労わる気持ちからひらめき、1000枚ものチケットを寄付しています。彼女にとって歌は生きる希望であり、その希望を少しでも人に分けてあげたかったのだと思いました。

そしてそんな妻を愛し見守る夫、シンクレア。初めてフローレンスの歌を聞いて驚愕する人に、「これが私の愛する妻だ」と言わんばかりの自慢げな表情を見せる。みなに「コンサートはやめた方がいい」と言われても、諦めず最後まで妻を支えた深い愛。「なんだ、ヒュー・グラント、まともな役もやるんだな」…と思った瞬間。もうこの役はヒュー様しかあり得ない!という衝撃の事実が発覚(笑)幾つになっても、やっぱりあなたはダメ男が似合いますね。もしヒュー様がメリルと日本に来日してたら、そんな言葉を送りたかった。笑

更にフローレンスが惚れ込んだ若きピアニスト、コズメ・マクムーン。演じたのはサイモン・ヘルバーグ。初めて予告を観た時から気になっていた彼はコメディ俳優さんでした。その為か表情がとっても豊かで見ていて飽きない。そして寝顔がキュートでした。ピアノはサイモン自身が演奏していて、監督も出演者もその腕前を絶賛。演技がピアノの音色にまで伝わって、メリルの歌声に負けない存在感を発揮していました。ピアノの他に、ある意外な一面の持ち主であるコズメにも注目です!

実はメリル自身も、超がつくほど歌が上手い“歌ウマ女優”として知られていて、フローレンスを演じるにあたって、完璧にオペラをマスターした後、下手な歌い方を更に練習するという役作りをしたらしいです。流石オスカーノミネート最多女優。本気度が違います。
それにしても、東京国際でみた生のメリルは、映画のメリルよりも数倍も若く綺麗に見えましたね。2人で世間話していた安倍マリオさんが羨ましかったです。笑



実話といってもストーリーは王道だし、今年公開された数多くの秀作の中では、目新しさも話題性も低いかもしれません。が!!!その分昔からある人の優しさや愛に溢れた、どこか懐かしく温かい作品です。
キャストを見て少しでも「おっ」と思ったら、ぜひ観てみてください(^^)
Chiaki

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