寂々兵

ヤクザと憲法の寂々兵のレビュー・感想・評価

ヤクザと憲法(2015年製作の映画)
3.9
リモザンの『Young yakuza』のように組長がもっと色々と語ってくれるものかと思っていたが、恐らく発達障害と思われる部屋住みの青年が弱肉強食のヤクザ社会で奮闘する青春モノの側面が強かった。自分をいじめた奴らを見返さんと気負い、ドスの利いた声でインタビューに答え、焼きそばを買いに行くにもポケットに手を突っ込み、『仁義なき戦い 頂上作戦』の小林旭の「武田じゃ」みたいなニュアンスで本家からの定時連絡に応える「心構えだけは立派なヤクザですさかい」感を涙なしには見られない。ヤクザになったことは後悔してないが世知辛い、と親分たちが口を揃える中、自分には覚悟がある、辞める気はないと語っていた松山君は後に組の金を持ち出しコンビニ強盗をして懲役7年、破門(あとついでに彼にヤキを入れていた若頭も別件で捕まる)。ヤクザの世界に身を置く覚悟というのは単に「諦めること」だというオーラがプンプンする山ノ内弁護士の軽快さとの対比が忘れ難い。そんな松山君の世話をしていた舎弟は一見穏やかだが、「私には選挙権がないんです。それは国籍に関係があるんじゃないですか」という台詞が強烈、脚本家じゃ絶対に書けねえよ…。あと登場する面々ほぼ全員の呂律が回ってないのも相当生々しい。オクッスリですな。

https://www.vice.com/jp/article/3kjba5/yakuza-constitution-2
圡方ディレクターへのインタビューが面白い。「弁護士事務所の事務員は山之内弁護士の実家の魚屋の女中だった」「僕がアホな質問をすることでカメラマンや音響が同情されて打ち解ける」「たこ焼きを奢ってもらったときに暴排条例違反だと思い断ったら怒られた」と裏話が膨大。
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