むさじー

彷徨える河のむさじーのレビュー・感想・評価

彷徨える河(2015年製作の映画)
3.6
<未開社会と文明、せめぎ合いの果てに>

アマゾン流域で一人暮らす呪術師のカラマカテの元に、約30年の時を隔ててドイツ人民族学者とアメリカ人植物学者が訪れた。民族学者は重い病から解放されることを願い、植物学者は目的を隠しながらも学問的興味と好奇心から、共に幻覚作用をもたらす薬草ヤクルナを求め、カラマカテを伴って旅に出る。
旅の途中、自然と共に生きてきた先住民族が、それを破壊し搾取しようとする西欧人に呑み込まれていく様や、キリスト教の布教活動が過激にカルト化した姿に出会う。それは西欧人の侵略的暴力性を視認する旅であり、聖と俗がせめぎ合う世界でもあった。また、現代科学で解決できない問題を、古来の非科学的な呪術や幻覚剤で解決しようとする二人の学者は、迷える文明人の象徴なのだろう。
そこに「自然対文明」「先住民対西欧人」という構図は見えるが、映画としては、世に生き方は一つではなく、他者を認め敬うことが大切。人間と自然、人間同士の共存と調和こそが人類を幸福に導くといったメッセージなのかと思える。今一つ響いてこなかったが、更に深い問いかけが隠れている気もした。
独特の空気は感じるし、モノクロ映像は美しい。だが、大河の流れに合わせたかのようなテンポと、混沌としたエピソードに迷い込んで未消化のまま、というのが正直な感想だ。
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