だいすけ

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?のだいすけのレビュー・感想・評価

4.0
お世話になってる教授のすすめで観賞。

一時は米国きっての巨大企業にまで登り詰めたエンロンの虚実の栄光、そして崩壊の裏にある真実を追い求めたドキュメンタリー。

エンロン事件については既知であったが、あらためて映像として見せられるとやはり衝撃を受けた。さらに驚くべきは、エンロンのみならず、メリルリンチやアーサーアンダーセン(現アクセンチュア)など名だたる企業も共謀していたことだ。実際の公判の映像、トレーダーの電話音声、元エンロン社員の証言インタビューなどを介して、こうした陰謀劇の顛末がわかる。

エンロン事件の恐ろしいところは大きく2つあると思う。
ひとつは、人間のもっとも汚い部分が浮き彫りになっている点だ。CEOは元々は世界的リードカンパニーをつくるという野心を抱いていた。野心が大きくなるほどに、欲望も膨れ上がり、やがて飲まれてしまった。こうなるともはや手段を選ばない。野心と欲望は紙一重なのかもしれない。
もうひとつ思うのは、この事件にはある種の宗教的な怖さがあるということだ。不自然なほどの高収益を上げていたにも関わらず、内部からはほとんど疑問の声が上がらなかった。もちろん共謀していたものもいる。企業の成功の追求を使命とし、倫理観の働かない麻痺状態に陥った者達である。一方で直接的には関与していない人も大勢いる。では、こうした人達はなにも知らなかったかといえば、そうではないと思う。知ろうとしなかったというのが正しいかもしれない。自分たちの働くエンロンは世界に誇れる一流企業であり、そんな企業が不正なんてあり得ない、正義に決まっている、といった感じだろう。ふと思ったが、社員は会社の「メンバー」であるという考え方が強い日本企業は、こうした宗教的な側面がより色濃く出るのではないか。大企業の不正の裏側には、こうした宗教的側面の作用があると思う。

ちょっと小難しいところはあるが、ジョークを交えて映画は進んでいくので、見方によっては楽しめる。僕にとっては興味深い内容だった。

「ask why」、痛烈な皮肉である。
だいすけ

だいすけ