この映画は公開時に劇場で見た。
終わった瞬間、まったく予想しなかったオチが衝撃的過ぎて、しばらく席を立てなかった。大袈裟でなく。
昔は会社に願書を送れる数も高々10社以内が限度だったという。いまはデジタル社会で1人で数十社、下手すりゃ三桁の企業に応募ができてしまう。多くの企業にエントリーすることが目的化してしまう。
また、ありとあらゆる情報がネットに溢れている。文字通り、情報が洪水となって押し寄せてくる。
そして、ネット社会ではリアルと虚像の狭間で複数の自分を使い分けることができてしまう。
ええかっこしいの人間が、取り繕ったり、表面をなぞってかいくぐろうとすると、いとも簡単に落とし穴にハマっていく。
そういう就職活動の怖さを描いた作品だ。
自分自身、二度と就職活動をしたいと思わない。就職活動には、受験勉強のような「絶対」がないから、一筋縄ではいかない。とてもトリッキーな関門だ。
面接に落ちると、学生生活はおろか、それまでの自分の人生や生き方、人格までもが否定されたような気になる。たったの30分で他人にそんなこと評価されて堪るかという憤りも覚える。
しかし、この映画で自分が一番面白く感じたポイントは、人間性が破綻している主人公を、企業側が結果として、面談を通じて「見透かされている」点にある。さすが、面接官である。
日本の就職活動は批判も多いが、一つの完成形でもある。会社と学生の「化かし合い」とも言われる就活だが、本作品においては会社に軍配が上がる。
そういう意味で共感するポイントも多いのだが、ネットのレビューは軒並み伸び悩んだ作品である。個人的には良くできていると思うのだが。