櫻イミト

高い標的の櫻イミトのレビュー・感想・評価

高い標的(1951年製作の映画)
3.5
アンソニー・マン監督の列車サスペンス。南北戦争直前のリンカーン暗殺未遂事件を元に描く。翌年のフライシャー監督による傑作列車ノワール「その女を殺せ」(1952)に大きな影響を与えたとされる。タイトルは背の高いリンカーン(193㎝)を指す。

1861年、ボルティモアで就任演説をするリンカーンの暗殺計画を嗅ぎ付けた警官ジョン・ケネディは上司に進言するが無視され、バッジを返上して暗殺者の乗る機関車に乗り込む。列車にはリンカーンを忌み嫌う南軍将校、北軍将校、黒人の召使いなど様々な立場の人々が。。。

まず、南北戦争直前を描いた映画を観たことが無かったので興味深かかった。

A・マン監督がフィルム・ノワールで磨いたサスペンス演出術が結実していて、夜の闇に黒光りする機関車と白い蒸気はノワールな雰囲気と史劇の重厚さを醸し出していた。全編の殆どが列車内を舞台に描かれているが、次々と重大なトラブルが発生し飽きることなく楽しめる。本作まではエンタテイメントで割り切っていたA・マン監督が、視野を広げ社会的背景を映画に盛り込んだことは記憶しておきたい。

刑事の名前がジョン・ケネディ。ケネディ大統領が就任したのは9年後の1960年なので出来過ぎた偶然と思われる。
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