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パーフェクトマン 完全犯罪のyueのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

パーフェクトマンっていうタイトルから想像してた感じとは真逆のストーリーで引き込まれた。
主人公マチューは才能もなければ度胸もない、だけどとんでもないことをしがちっていう印象。嘘に嘘を重ねて後戻りができなくなる感じと、ピエール・ニネの追い詰められた演技の迫力とで本当に怖かった。
夢はあるけど所詮ちっぽけな一般人っていう印象だったマチューが自分で償うには手遅れなところまで進んじゃって、どんどん追い詰められていくのは自業自得だけど見ててつらい。犯罪は犯罪だから仕方ないけれど、バレないで欲しいって思うし、最後には救われて自由になって欲しいって思っちゃう。本当に可哀想という言葉の似合う人だった。

死んだ軍人の日記を盗作したけど隠し通して完全犯罪、なんて単純な話じゃなかった。

盗作で注目を集めるっていうのは自分の才能じゃないとしても、それだけ絶賛されるような作品を丸々書き写して、しかももともと作家志望だったなら、もう一度過去作を書き直してみたり、新しいものを本気で書いてみたりするべきだった。

盗作した後に勉強したりして、自分が書いたように辻褄を合わせようとする努力のできる一面が描かれてたところが、更にマチューを可哀想な人にしていたと思う。それだけ努力ができるのに、どうして今まで成長できてこなかったんだろうと思う。

必死になる方向を間違えた人っていう印象が強い。確かに完全犯罪として成立していて、罪は逃れたけど、救われない。
彼の遺作として世に出た作品がヒットするのは、やっぱりマチューは盗作を通して成長していたことを表現していて、大切なのはマチューが自分自身の能力と向き合うことだったんだと気付かされる。自分から目を背けるのは絶対良くない。

警察の捜査の甘さとかには文句を言いたくなるけど、それだけ詰めの甘い重い犯罪を犯しておきながら誰にも気づかれない寂しさもあったと思う。だからこそ罪を償う機会も得られないし誰かに慰めてもらうこともできない、そんな切なさが好き。
見てる間はなんかすごいマチューの立場になって考えてしまう。才能の無さとか詰めの甘さから身近に思えたのかもしれない。感情移入というより、もし自分が本人だったらって想像しちゃった。
罪を認めるのは怖いけど、一人で背負って孤独でいるのも怖いから、私なら誰かに気づいて欲しいと思ってしまうかも。

マチューはたくさんの犠牲者を出したけど、彼自身も犠牲になった一人。そうやってマチューを守るわけではないけど、自分で自分を殺すことほど愚かなことはない。

誰かと語り合いたくなる物語だった。

(感想2021/10/11)
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