daiyuuki

ハッピーバースデー 命かがやく瞬間のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

4.6
母親からの精神的虐待によって心と身体に傷を負ったあすかは、祖父母の人間的な励ましと畑仕事や生き物とのふれあいによって癒され、人間への信頼と自らの生きる力を育んでいく。同時に、重度の障害をもつ少女めぐみとのふれあいを通して、いじめに苦しむ純子や母の過干渉に苦しむ兄の直人やいじめの首謀者の大輔など一人ひとりの人間の命の尊さをも感じとり影響を与えていく。
青木和雄の同名ベストセラー・ジュニア向け青春小説をアニメ映画化。
誕生日に母と兄から「お前なんて生まれてこなければ良かった」と言われて失声症になったあすかが、祖父母の下で畑仕事を手伝い生き物とのふれあいの中で命の大切さを知り、祖父母から無条件に愛される喜びを知り生きる力を取り戻し、祖父母からの「怒りたい時は怒れ。もっと自分の心を大事にしろ」という助言で、いじめに苦しむ純子を助けられず母に言いたいことを言えなかった自分を変えるべく自分を変えようと一歩踏み出していく成長物語を軸に、いじめに苦しむ純子や母の過干渉に苦しむ兄の直人やいじめの首謀者の大輔の中にある葛藤を描く中で、原作の青木和雄が見る者に伝えかったことは、「虐待やいじめの根っこにあるのは、加害者や被害者の愛情飢餓や暴力の連鎖に起因している。」ということ。
あすかの母は、両親が自分に無関心で病気がちの姉にかまけていたことで出来た心の穴を、自分の姉に似た娘あすかを虐待することや仕事に溺れることで埋めていた。あすかの兄の直人は、母の過干渉や期待に押し潰されそうになった苦しみをあすかをいじめることで晴らしていた。純子へのいじめの首謀者の大輔は、自分が母から受けた虐待の怒りを純子やあすかに向けた。
ある者は、あすかや親友の苦しみを知り、ある者はあすかや養護学校のめぐみの何に嫉妬していたかを知り、生き方を変えようとした。
この映画で、いじめや虐待の被害者や加害者の心情を知り、いじめや虐待を防止する教育的な映画としては良い。
だが、あすかなどのキャラクターの成長が唐突に思えたり、あすかの母が自分の病に向き合い成長していく描写が原作にあったのにアニメ映画になかったのは片手落ちという感じがするけど、教育現場や教員などの養成過程や家庭などで大事に見続けられるべきアニメ映画。
「乾いた心ではしっかり生きられない」
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