つちのこ

わたしは、ダニエル・ブレイクのつちのこのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

かなり、あっけなく終ってしまった。
私も短期間イギリスに住んでいたことがあるので、多少分る部分もあった。
(ピルが無料で貰えるというのでまず NHS に予約を入れる → 何やら色々登録する → 「じゃ、来週来てください」→ 予約した日に行って「ピルが欲しい」と言ったら「まずドクターに会わないと。予約取ってね」と言われる。友人からは「ドクターに会いたい!」って何回も言うんだ! というアドバイスをもらっていたので何回か言ってみたけど「いつにする? 金曜の朝しか空いてないからそれね」と決められる… → ピル貰えず帰宅 → めんどくさいから日本で買って日本に届いたのを送ってもらう)

とまぁこんな感じなので、無料で受けられる医療なんてのもこんな感じなんだろう。本当に待ってる間に死んでしまいそうだ。

ニューカッスル特有なのか、イギリス全体なのかよく分らないが、とにかくまぁひどいところだ...。ということは事情をよく知らなくても充分に分る。

話の中でダニエルを殺さざるを得なかったのも、ケイティが売春をやらざるを得なかったのも、監督がめちゃめちゃ怒ってるからなんだと思えば納得がいく。

基本的にイギリスは「7 つの海を制覇した」ツケを今払っているのだと思っている。他の国を侵略して言葉すら奪い、自分たちの言葉を植え付けた。

その結果、英語が話せるようになった貧しい人達が仕事を求めてイギリスに来る。イギリスのヒースロー空港は世界一入国が厳しいことで有名だ (そのまま移住されると困るから)。

しかし日本はどうだろう? 言葉こそ無理矢理奪ってはいないが、今は外国から移住してきている人もかなり増え、そういう人たちは努力して能力が高い (アジア圏の人で 3 ヶ国語以上話せるとかザラ) ので仕事もゲットできる。そうすると無能な日本人は職を奪われる。
その結果ホームレスになる人も増えるだろう。

何とも言えない。ケイティも無計画に (勉強したかったのに) 色恋にかまけて母親になってしまうなんて「もうちょっと考えろよ」と思う部分もあるが、彼女はとても立派な母親だ。

フードバンクのシーンはとても悲しく、観るのがつらかった。フードバンクの人達がとても優しかったのが救い。

でもそのせいで娘がいじめられてしまう。多分、18 歳のケイティは普通の女の子で好きな人と一緒にいて幸せいっぱい恋愛していただけなのだ。たった 1 回の受精でここまでの人生を想定して全て受け入れろ、というのはあまりにも酷じゃないだろうか。

イギリスでは貧困のせいで 5 人に 1 人の女の子が生理用品を買えない、という記事を見たことがある。実際、フードバンクにもなかったし、あのように万引きしてしまう女性ももしかしたら少数派じゃないのかもしれない。

ダニエルにしても時代に取り残されて「手に職」はあるはずなのに正しく評価されない。あのモビールとか本棚とか、心臓に負担かからない程度で作って売ったらいいじゃん、と思うけど自分の価値をうまく利用できない。

隣のチャイナ (なぜ?) のビジネスに乗っかっても良かったのに、プライドからそうしなかった。

BBC のポッドキャストか何かで勉強していたとき、「貧困層は生野菜などが高価で買えないため、安い加工食品を食べるしかない。加工食品は基本的に缶詰などに入っており、温めて食べるものだが電気代やガス代が払えなくて止まっているから、冷たいまま食べるしかない。そうすると栄養が偏ったり、無駄に高カロリーだったりするので健康を害する悪循環に陥る」と言っていた。

ロンドンでの家賃もめちゃくちゃ高くて、1 度タワーブリッジ近くの物件を見に行ったことがあるのだが、月に 10 万円払っても超絶狭い部屋で 4 人でシェアハウス (1 人 1 部屋貰えたかは覚えていない)。

老人になってもお金の問題で他人とシェアハウスしている人達も多いというのだ。これはなかなかキツいことだと思う。そしてやはり、ダニエルのようにライフラインが止まってしまう老人もいるのだそうだ。

日本はかなり裕福な国だろう。相当住みやすいと思う。最近は日本の貧困層なども認識されてきてはいるが、日本にもフードバンクがあることはあまり知られていないと思う。イギリスはキリスト教圏だけあってかなりチャリティーも盛んだ。そして実は日本でも様々なチャリティーサービスがある。

断捨離断捨離というのもいいけど、特にお金がいらないのなら是非寄付に回して欲しい。win-win の関係になれるものをみすみす捨てる必要はない。

日本人は寄付額も海外の先進国と比較して相当低いという。でもお賽銭は何の疑問もなくほとんどの人が投げ入れると思う。
自分のためのご利益には 1,000 円払えても、他人の救済には 1,000 円も払えないというのはおかしい。
たまに万札などをお賽銭で見かけることもあるが、あれは寺社側のサクラなのか、マジなのか?

ダニエルみたいな方法で隣人を助けることもできるが、フードバンクや現金での寄付などで隣人を助けることもできるのだ。国が助けてくれないのなら、できる限り私たちで助け合おう。そういう意味の映画なら、私たち日本人にも決して無関係ではないはずだ。