Kevin

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のKevinのレビュー・感想・評価

3.9
平和で静かな田舎町に相次いで起こった児童失踪事件。
内気な少年ビルの弟も、その内の犠牲者の1人である。
その事件後、“それ”と出会ってしまったビル。
ところがビルだけでなく、彼を含めた仲良し集団〝ルーザーズ〟も“それ”に出会ってしまったのだ。
彼らは勇気を出し、“それ”と立ち向かうことを決意するが...。

〝ペニーワイズ、“それ”は誰もが出会ったことのある存在〟

スティーヴン・キングの原作を基にした1990年【イット】のリメイク。

1990年版での欠点を見事に改善させた正統進化だった。

内容はというと、前作を観た人だとほぼ同じように感じるに違いない。
それもそのはず、劇中での出来事や台詞などは前作から抽出しているものが多いからだ。

だからといって真新しさがない訳ではない。

当然、前作には無いシーンもあるだけでなく、現在の映像技術や大小様々なアレンジにより、更なるホラー映画へと昇華されている。
前作を観た人にも楽しめる、或いは前作と比較できるからこそ一層楽しめるのだ。

個人的に思う1990年版の欠点はというと、やはりテンポの悪さだろう。

この作品をホラー映画として捉えるか、青春映画として捉えるかにもよるが、一応はホラー映画に傾くと自分は思う。

ホラー映画といえば多くが120分、またはそれ以下の尺で構成されている。

ところが【イット】はなんと187分、ホラー映画でなくともなかなかの長尺。
その上、蓋を開けてみるとその半分以上が回想シーンにあてられているではないか。

その回想シーンにも勿論ホラー要素はあるのだが、構造上、話が途切れ途切れになっている為、怖いもの見たさに観るといまいち乗り切れないのが正直なところ。

確かに青春モノとして観れば目を瞑れなくもないが、それでもやはりテンポの悪さは否めない。
(因みにこの1990年版【イット】は連続ドラマのため映画ではないのだが、あくまで今現在出回っている纏められたDVD版を観ての感想)

だが今作では135分に大幅に短縮。

それは前作での回想シーンにあたる部分のみを、より濃く描いたものとなっているからだ。

事の発端から幕を開け、あの約束で幕を閉じる。

以前観た時に感じた「なんか要らないところ多くね...?」が綺麗さっぱり排除され、話が一貫しており、思う存分物語へと没入出来るのである。
それ故に青春冒険モノとしても進化しているのは言うまでもない。

しかしまぁ、今回のペニーワイズの存在感たるや。

ティム・カリーの演じたペニーワイズも十分怪演だったが、今回のビル・スカルスガルド版ペニーワイズも負けていない。

寧ろ勝っている。

いや、正直に言うと断トツで勝っている。
「本当にあのビル・スカルスガルド?!」と思わずにはいられないほどの狂いっぷり。
常に涎を垂らしながらの子供たちに向ける完璧にイッた眼差し。
最狂で最恐に、最高に面白い。笑
小さい頃に見たら確実にトラウマ。笑

前作でのペニーワイズの真の姿に「え...??」と思った人もどうか安心を。
そこは同じではないので。(←唯一心配してた部分。笑)

今作を観るにあたって1990年版を観た方がいいのか?

個人的には必須ではないように感じた。
プロットは殆ど同じなので、より洗練された今作を観るだけでも十分すぎるほど楽しめるはず。
もっと言えば、怖さを体験したいのなら観ない方がおすすめ。

上では「比較しながら観れる」と書いたが、観ていない場合だとホラー映画としてなら前作を観た人より楽しめる。

と、こんなことを書いていたら前作に触れていない状態で観たかったと思える自分がいるくらい、完成度の高いホラー映画だった。
前作より劣る要素はどこにもないのではないだろうか。

Chapter1が終わり、次が今回で省かれた成人バージョンなのかな?
それはそれで楽しみ。
Kevin

Kevin