なるほど面白かった。52年にしてこの犯罪加害者の心理に寄り添う視点は先進的だったのか、最初に丁寧に解説をしてくれる。

女性嫌悪の男が次々と女性達を射殺していくフィルムノワール。監督は「十字砲火」のエドワード・ドミトリク。

50年代の作品で既に女性嫌悪＝ミソジニーorインセルを描いているのがまず驚き。男とそれを追う警察側両方が描かれてはいるものの、男がどうしてそうなってしまったのかはそこまで詳しく描かれていないのですが遊園地のボールを的に当てて女性を落とすアトラクションで何度も女性を落としては挙句の果てに直接ボールを女性に当てようとして周囲からドン引きされる狂気を見せたり彼に気付いた煙突掃除人を撃ち、引きのまま下へズルズルと下がっていく様子を撮ったり、前科有りの男達を集め彼らをからかいながら尋問したりと印象的なシーンはそこそこ有り。

テレビに出てる著名な女性が家の住所を公言し案の定狙われてしまうというプライバシーの緩さにも驚きで、雑誌に芸能人の住所・電話番号が掲載されていた昭和の時代同様今では考えられないですね。現代との違いが新鮮な作品です。

街を揺るがす1人のスナイパーは、女性への嫌悪感から殺人衝動に駆られる精神異常者だった‥‥
タイトルからスタイリッシュなガンアクションを想起させるが、その実態は異常性癖に悩まされる孤独な男が、真に周囲から注目されるまでを追ったヒューマンサスペンスだ。

冒頭のテロップで女性への性的暴行の件数が流され、あからさまにそのような描写があるのかと身構えたが、そこに映されるのは女性ばかりを狙うスナイパー。人付き合いがすこぶる下手な彼は、女性に見下されるような態度を取られると殺人衝動に苛まれ、気付けば引き金をひいてしまうのだ。そんな異常者がいるにも関わらず、街の保安組織は一向に捕まえることができず、自身の異常さにも気付きながらも止めてくれる者のいない孤独さから更に拍車がかかっていく。誰からも頼られない男の果ての姿は、まるで現代社会にも通ずる異常行動でしか自身の存在意義を見出だせない人々そのものである。ラストシーンはようやく彼にも安らぎが与えられると同時に、待ち受けるであろう運命に心が休まらない。

映像作品としても印象深い場面が多く、女性の背後を右往左往する姿や、遊園地であからさまに女性に対して暴力的な振る舞いを見せたり、遠方で叫ぶ作業員を仕留める一瞬に拘りを感じさせる。

前述のように、通常のガンアクションではなく、社会派ドラマの様相が強いため好みは分かれるだろうが、日本未公開かつDVD未発売という幻の作品というだけでも十分に見る価値はある。